戦国時代に活躍したのは男性だけ? 女性家長の歴史を発掘

戦国時代に活躍した人といえば?
戦国時代に活躍した人と聞くと、織田信長や豊臣秀吉のような戦国大名たちが思い浮かぶでしょう。日本史の教科書で紹介されている人物もほとんどが男性です。しかし歴史学の研究によって、戦国時代に活躍した女性リーダーの存在が浮かび上がってきました。
戦国時代は多くの地域国家が乱立した時代で、大名たちが領地に独自の社会を築いていました。統治者になるのは原則として男性でしたが、女性も大名の家族であれば統治者になる権利を持っています。そのため男性が病気になったり、まだ幼かったり、統治能力が低かったりしたときには、大名の妻や母などが代わりに政治を担いました。このような女性リーダーは、歴史学では「女性家長(かちょう)」と呼ばれています。
地域国家を支えた女性リーダー
今川義元の義理の母、寿桂尼(じゅけいに)も女性家長のひとりです。通常、男性当主が健在の場合は、公文書はすべてその男性名義で出されます。今川家の公文書も、義元など男性当主の名前が書かれていました。しかし義元の公文書が出されるまでの経緯を記した史料を分析すると、「この公文書は寿桂尼に頼んで出してもらった」などの内容が書かれているとわかりました。公文書の名義は寿桂尼ではないものの、裏ではリーダーとして政治に関わっていたのです。
視点を変えれば歴史が変わる?
従来の歴史学では、公文書はすべて男性当主の判断で出されていたと考えられていたため、公文書をもとに男性当主の人柄や考えを研究することも珍しくありません。しかし「戦国時代の社会で女性はどう生きてきたか」という視点で史料を集めて検証された結果、女性の働きかけによって公文書が作られたケースもあることが見えてきました。つまり歴史上の公文書を分析する際は、当主だけでなく、男女を問わず誰が関与して作られたものなのかを明らかにする必要が出てきたのです。すでに研究されてきた史料も視点を変えて読み直せば、歴史を覆すような発見があるかもしれません。
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