美術やアニメから考える「衣服と身体の関係」
リアルな世界の衣服と身体
ファッション論とは、衣服について多角的に考える学問です。ここでは「衣服と身体の関係」を考えてみます。
メディア論で著名なM・マクルーハンは、「衣服は第二の皮膚である」と論じました。これに対し哲学者の鷲田清一は、「身体そのものが一番目の衣服」だと述べています。
赤ちゃんは、成長とともに鏡に映っているのが自分だと認識するようになります。頭の中で「鏡にうつった像=自分」として身体のイメージがまとまっていくのです。このイメージこそが、最初に「まとうもの=第一の衣服」というわけです。
バーチャル世界における衣服と身体
アニメの『機動戦士ガンダム』では、人間がモビルスーツというロボットを操縦します。モビルスーツという「衣服」の中に人間がいるのです。しかし、その後の『新世紀エヴァンゲリオン』では、操縦者とエヴァンゲリオンとの神経が接続されています。エヴァンゲリオンが攻撃されると操縦者も同じくダメージを受ける。つまり、『エヴァンゲリオン』では衣服の中に身体があるのではなく、衣服と身体が同一化されているといえます。
さらに、インターネットの世界では、自分の分身であるアバターが登場します。ここにはリアルな衣服と身体は存在せず、アバターにとっては衣服そのものが身体です。衣服と身体の関係が、インターネットの普及によって変わってきているのです。
美術界での衣服と身体
20世紀前半に美術界に出現したシュルレアリスム(超現実主義)では、すでに衣服と身体の同一化を試みる画家がいました。例えばルネ・マグリットは『赤いモデル』という作品で、つま先が足指になった靴を描き、『マックセネットへのオマージュ』では乳房のある白いドレスを描きました。美術家の想像力は21世紀の私たちの身体を予言していたようにもみえるのではないでしょうか。さまざまな事例をもとに衣服の問題を考えるファッション研究は、人間自身について考えることと同じなのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
京都精華大学 デザイン学部 プロダクトデザイン学科 ファッションコース 准教授 蘆田 裕史 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
ファッション学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?