新しい時代の防災とまちづくりが課題の「地域安全システム学」
東日本大震災が投げかけたものとは
2011年3月の東日本大震災は、自然災害から地域や都市機能を守るシステムと技術のあり方について、非常に多くのことを私たちに投げかけました。それは、この地震が、第一に「時代の変局点」で迎えた災害であったこと、第二に今までに経験したことがないほど超広域で発生したこと、そして第三に都市機能がマヒしてしまうほどの壊滅的な巨大地震であったこと、この3点によっています。
「時代の変局点」とは?
「時代の変局点」とは、経済の右肩上がりの時代が終わり、右肩下がりの時代へ突入しているということです。現在の日本の社会制度の多くは、経済が成長する時代に、その成長を前提として作られました。ですから、低成長の時代には通用しなくなっているものが少なくありません。例えば、災害からの復興の基盤となる制度がありますが、その多くは、復興で新しいまちができれば土地の価値が上がり、経済発展につながって復興にかかったお金も賄えるという見通しのもとに作られています。しかし、今日の経済状況では、東日本大震災の復興が経済発展につながる可能性は高くありません。
予想を越える自然現象から地域を守る
東日本大震災後の日本は、時代のギャップによる困難性と、地震の超広域性・超巨大性によって、より大きく複雑になった復興の課題に直面しています。しかし、こうした事態は、今後も起こりうるものです。首都直下型地震や東海・東南海地震だけでなく、気候変動による大規模水害の多発も予想されているからです。こうした、いわば「新しい時代」の「新しい災害」から、都市や地域を守るためには、これまでとは違った観点から「防災・まちづくり」をとらえ直す必要があります。例えばそれぞれの都市や地域がもつ弱点を把握すること、自助(個人)・共助(まち)・公助(行政)のバランスのとれた施策を展開することなどです。そのための仕組みと技術を研究・開発することが「地域安全システム学」という学問の大きな課題なのです。
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