ロケットから宇宙エレベーターまで、炭素繊維複合材料が切り開く未来

ロケットから宇宙エレベーターまで、炭素繊維複合材料が切り開く未来

新世代の小型ロケット、イプシロンロケット

JAXA(宇宙航空研究開発機構)が2013年秋に打ち上げに成功したイプシロンロケットは、高い性能と効率的な運用の両立をめざして開発された、新世代の小型ロケットです。
液体燃料ロケットは誘導制御性能に優れ、大きな荷物を打ち上げられる半面、構造が複雑で運用が難しいという欠点があります。一方、固体燃料ロケットであるイプシロンロケットは、誘導制御や運搬可能な重量の面では液体燃料ロケットに及ばないものの、よりシンプルな構造で運用もしやすいため、高い頻度での打ち上げが可能なロケットとして注目を集めています。

最適な設計に必要な炭素繊維複合材料

イプシロンロケットには、炭素繊維を利用した複合材料がさまざまな部分に使われています。炭素繊維複合材料は非常に軽くて強度が高いため、燃焼により非常に高い圧力が加わるモーターケース(燃焼室も兼ねる固体燃料タンク)の素材に用いられています。また、最も過酷な環境にさらされるノズル部分には、熱にも強い炭素繊維強化炭素複合材料が用いられています。
こうした材料をロケットに用いる場合に重要なのは、どのような用い方をすれば必要かつじゅうぶんな強度を持つ構造にできるかということです。それには力学の観点からも、しっかりと考慮された設計を施す必要があります。

地上と宇宙をつなぐエレベーターも造れる?

最近では、ロケットに代わる地上と宇宙を行き来する新しい手段として、宇宙エレベーターにも注目が集まっています。3万6000キロ上空の静止衛星軌道上から地上にまで届くような構造物を造ることは、従来の素材では自身の重量に耐えられず、実現不可能とされてきました。しかし、近年開発されたカーボンナノチューブなど新しい複合材料を利用すると、構造によっては可能になるのではないかと言われています。
新しい素材が地上と宇宙をつなぐ、夢のようなアイデアが実現する日が来るかもしれません。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東京大学 工学部 航空宇宙工学科 教授 青木 隆平 先生

東京大学 工学部 航空宇宙工学科 教授 青木 隆平 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

航空宇宙工学

メッセージ

今の学生は、「余計なこと」をしたがらなくなったように思います。なにごとも過程を飛ばして、すぐに答えを知りたがる人が増えました。でも私は、「余計なこと」をしてほしいと思っています。それは決して無駄ではないのです。早急に結論だけを求めようとするのではなく、いろいろな勉強をして、いろいろなことを考えていれば、あらゆる方向に進む可能性が開けます。勉強の中での、一見無駄に思える「余計なこと」は、いつか必ず生きてくると思います。

東京大学に関心を持ったあなたは

東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。