より軽く、強く、丈夫なプラスチックが世界を変える

より軽く、強く、丈夫なプラスチックが世界を変える

プラスチックでできている機械

機械といえば、金属材料をイメージする人が多いかもしれません。しかし現在、自動車や航空機などの乗り物、パソコンや携帯電話など、さまざまな分野で、プラスチックなどの高分子材料が機械部品として使われるようになってきています。それは、金属よりも軽くて、強くて、丈夫なプラスチックが開発されるようになったためです。

ほかの材料との配合によって変わる特性

食品トレーなどでは、軽いプラスチックをそのまま使用しているが、そのプラスチックを、ほかの材料と組み合わせることによって、その特性を大きく変えることができます。例えば、炭素繊維を組み合わせたプラスチックは、軽量でありながら金属の10倍以上の強度を持たせることができるため、飛行機の機体などにも使用されています。また、歯車や軸受けなどの精密部品には、丈夫で摩擦ですり減り(摩耗し)にくいプラスチックが使われています。
このように、ほかの材料と組み合わせたり、混ぜ合わせたりして特性を変えることはできますが、それは単純な足し算ではありません。配合やつくる方法(成形加工)によっても特性は大きく変化するため、シミュレーションだけでなく、実験によって検証していく必要があります。

環境にやさしいプラスチック

プラスチック材料の利点は、金属に比べて成形加工がしやすく、複雑な形のものでも作りやすいこと、リサイクルできることなど、いろいろな特徴もありますが、最大の利点は、軽量化です。そのため、乗り物に使用した場合は、燃料を大幅に節約でき、省エネルギーにも貢献できます。
また、プラスチックの主な原料は、石油などの化石燃料です。石油は将来的に枯渇することが予測されていますので、ほかの原料からプラスチックを作る研究も進んでいます。「バイオマスプラスチック」といって、植物を原料としてプラスチックを作る技術は確立されていますが、現時点では、強度の面などで従来のプラスチックには及ばないことが課題となっています。今後のさらなる研究が待たれているのです。

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先生情報 / 大学情報

工学院大学 工学部 機械工学科 教授 西谷 要介 先生

工学院大学 工学部 機械工学科 教授 西谷 要介 先生

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機械工学

メッセージ

プラスチックは、身の回りのペットボトルや食品のトレーから、携帯電話、タブレット製品、パソコン、自動車や航空機といった乗り物など、さまざまなものに使われています。どうして使われているかというと、軽くて、強くて、丈夫な材料として利用価値が高まってきているからです。
高分子材料というと、化学式を想像するかもしれませんが、実際に形あるもの、動くものを作るためには、実は機械工学の力が必要になります。ものづくりに興味をもって、機械工学の道に進んでくれることを期待しています。

工学院大学に関心を持ったあなたは

工学院大学は、2017年に創立130周年を迎えた、伝統のある大学です。2019年4月から、専門性を高めた知識を得られるように、先進工学部の「応用物理学科」と「機械理工学科」では各学科を2専攻に分け、きめ細かな学修ができる体制に変わりました。
応用物理学科には応用物理の分野を究める「応用物理学専攻」と宇宙関連分野を学ぶ「宇宙理工学専攻」を、また機械理工学科には従来の機械の知識を学びながらグローバルな視点を養う「機械理工学専攻」とパイロットライセンスの取得をめざす「航空理工学専攻」を設置しました。