塗るだけで涼しくなる! 既存建物の「省エネ化」

太陽の熱が建物に与える影響
建物は、太陽の光や風、雨など、自然環境から影響を受けます。中でも日差しは、屋根や外壁の表面温度を大きく上昇させて、その熱が室内に伝わることで室温を上げる要因となります。猛暑が続く近年は、冷房の使用量が増えることでのエネルギー消費量の増加が課題となっています。これに対応するため、新築の建物では断熱材や高性能な窓など、省エネルギー性能の高い技術が導入されています。一方、既に建てられた建物では、こうした最新の設備をそのまま取り入れることが難しく、十分な省エネルギー対策が進んでいません。そこで、より手軽に導入できる塗料による対策が注目されています。
太陽熱を反射する塗料
太陽の熱を効率よく反射する「遮熱塗料」が開発され、その効果的な活用方法が研究されています。これを塗布すると、表面温度の上昇が抑えられて、ひいては室内温度の上昇も抑えられます。さまざまな建物に塗布して調査したところ、金属製の屋根をもつプレハブ建築での効果が最も大きくなりました。このような建物は、工場の事務所やコンビニエンスストアなど多く存在し、その暑さ対策は空調頼みです。この塗料で屋根からの熱が遮られることで、冷房の使用量を大幅に削減できました。ただし、遮熱塗料は太陽光を反射する仕組みのため、反射された熱が別の場所に影響を及ぼす可能性があります。もし壁面に使用した場合、反射光が歩行者に向かうこともあるため、塗布の場所や角度には十分な配慮が必要です。
既存の建物を生かすために
日本では、2030年には大幅な温室効果ガス削減、2050年までにカーボンニュートラルをめざしています。既存の建物を生かしながら、エネルギー消費を減らし、かつ誰もが快適に暮らすためには、簡単に施工できて、コストも抑えられる遮熱塗料のような技術が、ますます重要です。外側に少し手を加えるだけで、室内の快適さを向上させて、エネルギーの使用を抑えられる「人にも地球にもやさしい建築」を実現する研究が進められています。
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先生情報 / 大学情報

崇城大学工学部 建築学科 教授村田 泰孝 先生
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先生への質問
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