パワー半導体の世界では、ダイヤモンドがアツい!
電力の変換に不可欠な半導体
金属など電気をよく通す「導体」と、ゴムのようにほとんど通さない「絶縁体」の中間の性質を持つ物質や材料のことを「半導体」といいます。その半導体の中でも耐電圧度の高いものが、インバータやコンバータといった電力変換器「パワーデバイス」に用いられています。
新幹線の進化もパワーデバイスが支えてきました。2020年7月にデビューしたN700S系の駆動システムには、シリコンカーバイド(SiC)と呼ばれる、ケイ素と炭素の1対1の結晶を用いたパワーデバイスが採用されています。これによりシステム全体の小型・軽量化が可能になったのです。
シリコンの次に来る素材とは
従来、半導体の基板となる素材には、シリコンが用いられてきました。シリコンは地球上で酸素の次に多い元素であり、精製がしやすい点が重宝されたのです。ただしシリコンには薄いと電気的に壊れやすいという短所もあります。そのためシリコンに代わる素材の研究が盛んに行われています。一般的には透明なものほど耐電圧性が高いとされており、窒化アルミニウム(アルミナイトライド)などはその条件にピッタリとマッチします。しかしつくるのが難しく、まだ実用化には至っていません。むしろ少し透明度が劣る窒化ガリウム(ガリウムナイトライド)の方が、応用に向けた研究が進んでいます。
ダイヤモンドが世界を変える!
その中で近年、話題になっているのがダイヤモンドです。ダイヤはガラスのように電気を通さないイメージですが、紫外線を当てると内部に電気が流れる状態ができます。シリコンよりも丈夫なうえ、電子の流れも速いという利点があります。ピュアな人工ダイヤをつくる技術が発達してきていることもあり、今後、ダイヤ内の電子の性質を詳しく調べ、基本データを収集することで、とても良い半導体の仲間になると期待されているのです。もしかすると将来的には、ダイヤを用いたパワーデバイスを充電部に持つ「電気飛行機」の時代が来るかもしれません。
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和歌山大学 システム工学部 材料工学メジャー 准教授 秋元 郁子 先生
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