廃棄物が中国の砂漠化を食い止める
中国の汚染の現状
中国の大気汚染の深刻化は、世界的な話題となっています。中国では、エネルギーを石炭に頼っている部分が非常に大きく、石炭による火力発電は、二酸化硫黄(いおう)などの硫黄酸化物を大量に発生させます。硫黄酸化物の排出量は、中国が世界一です。日本では、火力発電所など、硫黄酸化物が発生するところには、硫黄分を取り除くための脱硫(だつりゅう)装置の設置が義務づけられています。しかし、中国では、やっと脱硫装置が普及しはじめてきたという段階です。
砂漠化を止める脱硫石膏
硫黄酸化物による大気汚染は、住民の健康被害だけでなく、酸性雨の発生や土壌の酸性化などを引き起こしています。また、中国では、毎年3600平方キロメートルの土地が砂漠化しているとも言われています。そのうち、約95%は、人為的な要因によるものです。
その砂漠化を食い止めるために、脱硫装置から出る廃棄物を利用しようという研究が進んでいます。脱硫の過程では、脱硫剤に含まれるカルシウムを反応させて硫黄分を取り除きますが、その結果、脱硫石膏(せっこう)と呼ばれる廃棄物が生まれます。その脱硫石膏を土壌にまくことで、砂漠化しつつある土壌を改良しようという試みです。カルシウム分が土壌に吸着することで、土の通気性や透水性がよくなり、植物が生育しやすくなるのです。
廃棄物ではなく、副産物と考える
中国では、家庭用燃料としても石炭が使われていますが、特に質の悪い石炭からは、硫黄分が多く発生します。そこで、石炭に農業系の未利用バイオマスと脱硫剤を混合して成型したバイオブリケットという新しい燃料を作る試みも行われています。この燃料は、脱硫効果があるだけでなく、燃やした後の灰がやはり土壌改良に役立つとして、中国での普及が期待されています。廃棄物をただ捨てるべきものではなく、「副産物」と考え、再利用するというシステムは、今後の環境問題に取り組む上でも、重要な考え方になっていくでしょう。
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工学院大学 先進工学部 環境化学科 准教授 酒井 裕司 先生
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