数学の解は美しい画像になる
画像加工の仕組み
スマートフォンやパソコンのアプリで画像加工をしたことはありますか? 指一本で簡単に操作できますが、中ではコンピュータが膨大な計算を行っています。
画像は、計算上ベクトルで表します。白黒はX軸だけの1次元に対して、カラーは赤・緑・青の3色の組み合わせなので、X軸Y軸Z軸の要素を持つ3次元のベクトルです。つまり、カラーは白黒よりも3倍の情報があるのです。白黒に100個の情報があるなら、カラーには300個の情報が存在します。もしカラーから白黒にするのなら、300の情報に白黒画像の規則に見合う行列を掛けて、100の解を導けばいいのです。
白黒をカラーに加工する
白黒をカラーにするのは、その逆の計算です。しかし、100×3の行列を計算することになり、300個という変数では多すぎて解が無限に存在してしまいます。つまり、どこにどう色を付けていいかわからない状態です。むやみやたらに色を付けても画像らしくは見えません。カラー画像の「画像らしさ」が必要なのです。通常、赤い1点があれば、その隣に行くにつれて赤い色がグラデーションをしながら変化し、物のエッジのところで大きく色が変わります。これが「画像らしさ」であり、3次元空間内の関数で表現できます。計算の解がこの関数にそっていれば、画像らしく見えます。
画像らしさの関数
さらに計算を解くためには事前情報として、ヒントが必要となります。1つは、事前に数か所程度の色を指示する方法。もう1つは、ディープラーニングによって、例えばバナナの色は黄色だと判断させる方法です。こういったヒントを利用して、コンピュータが計算し、解を「画像らしさ」の関数に寄せることで、白黒写真に適切な色を付けることができるのです。
画像処理では、行いたい加工に合わせた数式を考えてプログラムを組んでいきます。数学の解が美しい画像となって出てくるところが、研究の醍醐味(だいごみ)だと言えるでしょう。
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工学院大学 情報学部 コンピュータ科学科 准教授 雨車 和憲 先生
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