光には夢がある、光を制御して快適な通信実現を!
クリアになった国際中継
今や国をまたがる通信は「光」で行われることが当たり前になり、世界中に海底ケーブルが張り巡らされています。その恩恵が感じられるのが、オリンピックです。1990年代までは衛星中継が主だったため、海外からの映像にはタイムラグや音声、画質の乱れがありました。しかし2000年のシドニーオリンピックの頃からは、ほとんど国内と変わらない映像が見られるようになっています。これは中継を海底ケーブルに切り替えたためで、このように多くの情報を長距離、エネルギーのロスなく伝送できることが、光ファイバーの利点なのです。
デメリットをメリットに
実は光通信は情報の伝送を行うのみで、信号処理は電気に委ねられています。しかし電気デバイスでの処理能力は限界に近づいているため、今以上に多くの人が大容量の通信を行うようになると、回線がパンクする恐れがあります。ならば混んでいる波長帯域を避け、空いている帯域を使えないかというのが、光の波長変換です。
光はある特殊な条件、例えば信号を強くし過ぎると周波数が変化し、送っていない光が出てくるといった現象が起こります。そのため通常はそうならないよう制御しているのですが、裏を返せば、これを利用して無線通信のチャンネル変換のようにフレキシブルな波長変換が行える可能性があるのです。
光の技術はまだまだ未熟
最大の課題と言えるのが、光には制御する、電気におけるIC(電子回路)のようなものがないことです。そのため周波数を適切に制御するのが難しく、まだ電気に頼らざるを得ないのです。光の技術は発達しているように見えますが、電気に比べればまだまだ未熟です。それは、電気に例えるなら1930年代、真空管が開発されたばかりのレベルでしかありません。言い換えれば可能性は広がっており、ファイバーを使い周波数を変える、個々のデバイスの特性を生かして思いも寄らないシステムを作るなど、さまざまなアイデアが試せる土壌と可能性があるのです。
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先生情報 / 大学情報
電気通信大学 情報理工学域 II類(融合系) 情報通信工学プログラム 教授 來住 直人 先生
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