音は聞くためだけではない! 超音波技術で世の中を豊かに
超音波を使った技術の開発
エコー(超音波診断装置)は、体内に向けて超音波を出し、臓器や異物で反射してくる波の強度や時間の遅れを測定して画像に変換するものです。しかしエコーでは、異物の有無はわかっても、その固さなど力学的な特性までは画像化できません。また、エコーの画像は一般の人にとってわかりづらく、判別するには慣れが必要です。そこで、体内にある異物の固さや動きやすさまで調べてわかりやすい画像に変換する、「バイブロアコーストグラフィ(Vibro-acoustgraphy; VA)」という技術の開発が進められています。
超音波の「力」でより正確な診断
VAは超音波の力で異物などを物理的に押すことで振動させ、対象から再放射された音波や振動を測定する技術です。対象が重いものや固いものであれば再放射は小さく、動きやすいものや柔らかいものであれば再放射は大きいため、その違いから異物の固さや動きやすさを画像化します。エコーの画像に加えてVAの画像も解析すれば、体内の傷や裂け目、病状などが見やすくなり、より正確な診断につながるものと期待されます。まだ基礎的な研究の段階ですが、将来的には実用化が目標とされています。
パラメトリックスピーカの改良
超音波の活用はほかにもあります。普通のスピーカから放射される可聴音は広がりながら空間を伝わるため、決まった場所へ音を届けるのが困難です。これに対して「パラメトリックスピーカ」は広がらずに伝わる超音波の特徴を利用して、特定の方向だけに音響情報を届けることができます。パラメトリックスピーカは空港の動く歩道や駅のホーム、博物館の展示ブースなどで使われています。さらに超音波の届く距離を調節できれば、うしろの人に話を聞かれたくない銀行の窓口など、活用できる場面がさらに広がります。ノイズキャンセリングヘッドホンの原理と同じように、パラメトリックスピーカをもう一台組み合わせて信号を送り、可聴音を適切な距離で打ち消す原理を利用しています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
電気通信大学 情報理工学域 II類(融合系) 電子情報学プログラム 教授 野村 英之 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
音響学、音響工学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?