AIとVRで橋を点検! テクノロジーを活用したインフラ管理
橋の点検は課題だらけ
日本には橋が約73万基あります。膨大な数ですが、どの橋も5年に1回の頻度で点検しなければなりません。ただし人材、財源、技術力が不足しており、特に地方では多くの橋の点検が間に合っていないのが現状です。この問題を解決するために、AI(人工知能)とVR(仮想現実)を使った橋の点検技術が開発されました。
点検の負担を軽減
この方法では、ドローンが撮影した動画から抽出する数千枚の写真が必要です。写真をもとに3Dデータを作成し、AIが損傷箇所を検出します。続いてVR空間上に点検対象の橋を実寸大で表示し、AIが検出した損傷箇所を人間がダブルチェックすれば点検は完了です。
この方法を使えば、点検の安全確保や品質の安定、効率化につながります。コンピュータとVRゴーグルを使って現地にいる感覚で橋の点検ができ、さらに足場を組む必要も、炎天下や大雪の日に屋外に出る必要もありません。また、VRで再現した橋には木や汚れのような障害物がないため、すみずみまで点検がしやすくなります。この技術は海外からも注目されており、今後は世界の橋を対象とした実証実験が行われる予定です。
「AIのためのAI」って?
ただし、損傷箇所をAIが正確に指摘するためには、莫大な量の「教師データ」という事例のデータで学習させなければなりません。橋の損傷にはさまざまな種類や規模があるので、十分な教師データを集めるには時間がかかります。また、深刻な損傷などの画像は実社会ではなかなか手に入りません。
こうした問題を解決するために、「AIのためのAI」が作られました。教師データを作ることが専門のAIです。まず人間が現場で橋の損傷例を集め、次にAIのためのAIが疑似データを増やしていきます。これにより、任意の規模や種類の損傷例を無限に作成できるようになり、損傷検出用のAIを短時間で学ばせることに成功しました。この方法を用いれば、初めて対応する構造物の場合でも比較的短時間で検出に必要な教師データを作り出すことができるのです。
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金沢大学 融合学域 先導学類 准教授 藤生 慎 先生
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