人間の反応や行動から不正行為を判定―自宅で大学受験も可能になる?
「自宅受験」を可能にする取り組み
公的な試験を受けるには、特定の会場に行く必要があります。しかし交通インフラが未成熟な国や地域に居住している場合、会場に行くのも一苦労です。そこでコンピュータやタブレット端末を使った遠隔教育の延長として、遠隔的な学力測定の取り組みが行われています。実用化できれば、さまざまな事情で試験会場に行けない人が、自宅で受験することが可能になります。また日本にいながら海外の大学の試験を受けることも容易になり、海外からの留学生も受け入れやすくなるでしょう。
不正行為は「目」でわかる!
受験者を一カ所に集める理由として、不正行為の監視があります。不正行為もハイテク化が進み、超小型のイヤホンで外部から解答補助を受けるといったケースまであります。実際の会場でも見つけにくい不正行為をWebカメラで発見するのは至難の業ですが、判断材料となるのは目の動きです。嘘をつくと顎(あご)を触る、頭をかくなどと言われますが、こうした行動は訓練すれば制御できます。しかし視線の細かな制御は難しく、特に不正行為のように後ろめたい行動を取ると、不自然に視線が停留します。そこで人間の視線の動きを追跡・分析する「アイトラッカー」という装置を使い、受験者の視線を追いかけるのです。
いかにデータを集めるかが課題
不正行為の判定には、人工知能を使用するため、多くの実際の「不正行為のデータ」を集める必要があります。しかし、「不正行為のふり」と「実際の不正行為」は全く異なりますから、不正行為と似たふるまい、例えば文章を読むふりをしながらヒアリング試験を受けてもらうといった二重課題を与え、不正行為の代用とします。こうしたデータをいかに集めるかが計量心理の難しいところです。
また、Webカメラでの監視では、あからさまにカメラを向けられては実力を発揮できない受験者もいます。どんなにうまく不正行為を見つけられるシステムでも、学力測定に影響を与えないようにする必要もあるのです。
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先生情報 / 大学情報
成蹊大学 理工学部 理工学科 教授 小方 博之 先生
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