電子の“波”の性質を利用した次世代テクノロジー

電子の“波”の性質を利用した次世代テクノロジー

「半導体素子」における“電子のふるまい”

私たちが日常的に使っている携帯電話やパソコンなどといった現代の電子機器には、IC(集積回路)をはじめ、半導体を利用した「半導体素子」と呼ばれる部品が必ず使われています。ICやトランジスタなど、現在主に使われている「半導体素子」は、電子の“粒”としての性質(“ふるまい”とも言う)を利用して成り立っています。
電子には“粒”としての性質のほかに、“波”としての性質もあることが知られています。この波としての“ふるまい”を見せる電子を利用した半導体をつくると、「半導体素子」に新しい機能、新しい特質を持たせることができるのです。
この新しい「素子」は、現在の機能を著しく凌駕(りょうが)する次世代テクノロジーの実現に道を開くものなのです。

電子の“波”の性質を利用する方法

それでは、どうしたら電子の“波”の性質を利用することができるのでしょうか。ここで出てくるのが、「量子力学」という分野です。量子とは物理量の最小単位。量子力学とはこの極めて小さい世界を扱う力学です。
電子は、比較的広い領域では“粒”としてのふるまいを見せますが、量子力学が扱う狭い領域では“波”としての性質を見せるのです。この場合の量子力学の“狭い領域”とは「ナノレベル(ナノは10-⁹)」です。その極小レベルではじめて、“波”としての電子の性質を見ることができます。

量子力学が次世代テクノロジーの扉を開く

量子力学によって実現する、電子の“波”の性質を利用した新しい素子は、量子コンピュータ、量子情報通信などと呼ばれる次世代テクノロジーを可能にするものです。今後は「量子」と名のつく機器や技術が、実現する時代になるのです。
それは、今までの常識的な物性を超える機能が見込まれてさえいます。高速、超低消費電力、高効率、高性能化が期待されています。

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先生情報 / 大学情報

電気通信大学 情報理工学域 III類(理工系) 電子工学プログラム 教授 山口 浩一 先生

電気通信大学 情報理工学域 III類(理工系) 電子工学プログラム 教授 山口 浩一 先生

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電子工学、半導体工学

メッセージ

半導体やナノテクノロジーといった電子工学の分野は、次世代技術の研究と開発に携わるやりがいのある分野です。個々の研究には一見、社会とのかかわりが見えにくいものもありますが、携わってみれば、世の中と強くつながっていることも、よくわかってきます。電子工学の分野に興味を持ったら、ぜひ、飛び込んでみてください。そして自分の興味をさらに伸ばして社会に役立てられるよう取り組んでほしいと思います。

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電気通信大学は、東京にある理工系国立大学で、「工学」と「理学」のうち、特に情報分野および理工分野を核とした教育研究を行っています。先端科学技術を支える全分野、例えば、情報、通信、電子、知能機械、ロボティクス、光科学、物理、量子、化学、物質、生命などの分野を網羅しています。社会で活躍する人材の育成をめざし、ものづくりに意欲を燃やす学生の期待に応える教育環境を提供します。