人間に近い知的ロボットを開発するために必要なこと

人間に近い知的ロボットを開発するために必要なこと

知的ロボットを開発するための3つの技術

知的ロボットを開発するには、次の3つの技術が必要です。まず、カメラやマイクなどで外界を認識・理解するための技術、次にそれらの情報から必要なものだけを抽出し記憶する技術、そして蓄積された情報を基に意思決定を行う技術です。ところがロボット開発はまだまだ発展途上で、外界認識ひとつをとっても多くの難題が潜んでいます。例えば、カメラに自動車が映った時にそれを「自動車」だと認識するためには、その形をあらかじめコンピュータに登録しておく必要があります。自動車の形は車種や製品によってさまざまです。しかも、カメラに映る自動車の形はカメラの位置によって数えきれないほどの種類があります。それらを登録するのは、いくらコンピュータの処理能力が高速になり膨大な情報を記憶できるといっても、決して容易なことではありません。

人間の認識方法を取り入れる

ここで、人間はどのようにして自動車の形を認識しているのかを考えてみると、ボディやタイヤ、フロントガラスなどのパーツの位置関係をとらえています。そこで、それらの位置関係を抽出して、コンピュータに登録すれば、カメラの位置が変わっても少ない情報で自動車だと認識できるようになります。人間のような、モノのとらえ方の特徴を理解する方法を取り入れれば、より賢いロボットの開発が可能です。

課題は満載。そこに楽しみがある

ただ、カメラの映像からものの境界線やエッジなど特徴的な部分をとらえることができなければ、パーツを抽出することはできません。今のところは、認識できる対象は限られています。また、日常世界ではさらに難題があります。自動車の前に人が立っている場合など、複数のものが重なって見える場合、また対象が動いている場合はどうするか? 逆に自分が動いている場合、相手をどう認識するか? ロボット開発にはこれらの課題を1つひとつ乗り越えていく楽しみがあるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻 教授 堀尾 恵一 先生

九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻 教授 堀尾 恵一 先生

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生命体工学

メッセージ

高校時代はさまざまなことに興味を持って、将来の間口を広げてほしいと思います。私が研究している知的ロボット、知的なエージェントの開発も、工学的なもの作りの知識だけではうまくいきません。例えば、心理学や脳の仕組みを明らかにする神経生理学の知識も役に立ちます。そのような知見が人間に近いロボット開発には必要だからです。機械は以前に比べ身近な存在になっています。しかし、豊かな人間生活のためには、まだまだ多くの課題があります。機械を意識せずに人間・機械が共存できるシステムを実現できればと考えています。

九州工業大学に関心を持ったあなたは

九州工業大学大学院生命体工学研究科は、北九州市若松区の北九州学術研究都市内に2001年に開学しました。生命体工学という新しい分野を創成し、生物の持つ、省資源、省エネルギー、環境調和、人間との親和性等の優れた構造や機能を解明し、それを工学的に実現し応用することのできる技術者や研究者の育成を目標としています。また、本研究科では様々なプロジェクトに取り組んでおり、ロボットによるサッカー競技会への参加やトマト収穫ロボット競技会の企画等を通じて、「自然とロボットのあり方」について研究を進めています。