ウクライナ避難民の受け入れから見えてくる「国際協力」とは
難民の受け入れ
2022年、ロシアによるウクライナ侵攻により、ウクライナに住む人々は国外に避難せざるを得なくなりました。EUの国々は、早い段階でウクライナ難民を分担して受け入れることを決定しています。これは非常に寛大な措置であり、以前より国際協力が進展したように見えなくもありません。ただ、ウクライナ難民の受け入れはスムーズである一方、東ヨーロッパの国の一部はシリア難民の受け入れを拒否し、アフガニスタン難民については現在でも積極的ではありません。ミャンマー難民は、アジアの問題として片付けられている印象もあります。
受け入れの対応はなぜ違うのか
対応の違いの原因は人種差別だと考えることもできますが、政府の対応は感情的なものではなく、現実の外交に即したものです。つまり、どの国のどの民族を受け入れることで、国内政治にどんな影響が及ぶかを合理的に考慮していると考えられます。ウクライナ難民の場合、ロシアとウクライナの戦争をできるだけ早く終わらせるように欧米諸国が動いており、終戦後にはウクライナの復興を積極的に支援する算段があると予想できます。難民を保護したとしても、早い段階で去っていくという目論見があることが伺えます。一方で、シリアやアフガニスタンは国家再建が難しく、早い段階では復興しないと想定されるため、難民を受け入れれば永住する可能性もあります。
国際協力のバランス
望ましい動きとしては、難民を単に受け入れるだけでなく、難民が出る状況を元から絶つような外交などの国際協力です。戦争や内戦が原因であるとしたら、そもそも対立が紛争に発展しないような予防外交や、独裁体制を民主主義体制に移行するような支援をすることが重要です。しかし、内政干渉に当たるとして反発もあり、簡単ではありません。この状態を改善するために、アメリカなどの大国がより強いリーダーシップをとった方が良いのか、あるいは逆にリーダーシップを弱めて国連などに主導権を譲る政策をとった方が良いのか、研究者の間でも意見は分かれています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
上智大学 法学部 国際関係法学科 教授 岡部 みどり 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
政治学、国際関係論先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?