なぜ「教室」の形が変わってきたのだろう?
産業革命時に発明された「教室」
日本の学校の「教室」と言えば、壁と扉で仕切られた部屋に、大きな黒板が配置され、黒板の方を向いて机とイスが並んでいるというのが、典型的なスタイルです。この教室の形は、明治期に師範学校で導入されたのが始まりで、学校の教室の標準的なスタイルとして定着しています。
こうした形の教室が誕生したのは、産業革命時代のイギリスでした。工場労働者の子どもたちを教育するために設けられた施設が教室の始まりで、大勢の子どもたちを少ない教師が監視・監督できるように、子ども全員が教師の方を向いて座る形になったのです。
途上国の教育に貢献する出張授業
効率的に子どもを監督する目的から生まれた教室ですが、少ない人数の教師が多くの子どもを教育するには適した方式で、日本でも、明治以降の子どもの学力向上に大きく貢献しました。現在、この教室は、日本から途上国へとさらに広がっており、ユネスコが日本の資金援助を受け、「世界寺子屋運動」という名前で、途上国での出張授業を行っています。この授業を受けた人が教師となり、地域の教育活動に従事するなど、活動の成果も出ているようです。
教育ニーズの変化とともに変わる教室の形
しかし、この形の教室は、大勢の基礎学力を上げる方式として評価される一方で、子どもの主体的な学びにつながりにくいとして、ドイツや北欧を中心としたヨーロッパでは見直されるようになり、1970年代には、話し合い学習のための新しいスタイルの教室が誕生しています。また、米国でも、オープンプランスクール、あるいはオープンスペーススクールという間仕切りのない広い場所で学ぶ形式の教室が登場しています。日本でも東京都港区立の小中一貫校のほか、全国各地の学校で、オープンスペース型の教室を導入するところが増えています。このように、教室の形も、求められる教育の内容や社会環境の変化とともに変わってきているのです。
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明治学院大学 社会学部 社会学科 教授 坂口 緑 先生
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