トイレは男女別が当たり前? 常識を〈疑う〉ことから社会学は始まる
トイレは、なぜ男女で分けられているの?
私たちは普段、当たり前のように「男」「女」で分けられたトイレを使っています。しかしよくよく考えてみると、どうして「男」「女」で分けられているのでしょうか? 1950年代のアメリカでは、「白人」「有色」という人種で分けられていました。カリフォルニア州の小学校では、ここ数年で男女別のトイレが徐々になくなりつつあります。あなたの自宅のトイレだって、男も女も使っているのではありませんか? こうして考えると、「トイレ=男女で分かれている」という常識は、決して当たり前で済ませられることではなく、なぜそうなっているのかを考えるべき謎だということが見えてきます。
心と体の性が一致しない人は、どちらのトイレ?
そもそも性別とは何なのでしょうか。生物学的に人間は「男」「女」の2つに分けられると考えがちですが、「自身の性別に違和感を持っている人」、いわゆる性的マイノリティの人もいます。トランスジェンダーと呼ばれる、心と体の性が一致しない人にとっては、生物学上の区別(性別)によって使用するトイレを分けられることには苦痛がともないます。「男の体だから性別は男性」と決めつけられるほど、人間は単純なものではないのです。
どうしてその区別は存在するの?
「LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとったもの)」の問題が注目されるようになってきています。「トイレは男女で分かれているのが普通」「男性は女性を好きになるのが普通」というその「普通」に立ち止まって、どうしてそれが「常識」とされているのかを見直してみることが大切なのです。
性別以外にも人種・国籍・階層など、私たちの生きる社会には、たくさんの区別や分類が巧妙に張り巡らされています。その区別や分類に対して、「好き」「嫌い」、「正しい」「正しくない」と片付けるのではなく、それらが、どうして常識として成り立っているのかをとことん追究して考えることに、社会学の存在意義はあるのです。
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先生情報 / 大学情報
明治学院大学 社会学部 社会学科 教授 加藤 秀一 先生
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