環境への配慮と快適性の両立を実現するまちづくり

環境への配慮と快適性の両立を実現するまちづくり

心地よさには個人差がある

環境に配慮しつつ、人間の快適性や健康性を求めるまちづくりや建物づくりをするためには、乗り越えるべき課題は数多くあります。その中でも、都市部の気温だけが上昇するヒートアイランド現象や、地球温暖化による気候変動など、熱環境の問題は社会全体として取り組むべきテーマです。
環境における熱・光・空気・音などの物理的要素を実測することは重要です。例えば、避難所に指定されている体育館の熱環境を調べることで、本当に避難所として適しているのか、改善の方法があるのかなどが検討できます。ただし、どのくらいの気温を快適に感じるのかは人によって違います。環境工学とは、より多くの人の快適さを実現するために、都市デザインや建築デザインにおける最適解を探す研究でもあります。

数値+実体験が人を納得させる

快適性や健康性の評価には、実測で得られた情報や、分析で得られた数値化されたデータが必要です。それだけではなく、人がその空間をどう感じているのかを明らかにすることも、重要な研究の一つです。アンケート調査などの結果を測定した数値とすりあわせることで、課題解決の糸口が見えてきます。
例えば省エネルギーに適した住宅を設計したとしても、そこに住む人に省エネの意識がなければあまり効果は得られません。建物を作るだけでなく、どう利活用していくかという観点が必要です。住民の意識を変えていくためには、研究成果に人々が実感できるような説得力が求められます。

大学での研究や市民活動が政策につながる

研究成果の多くは、自治体の具体的な環境政策に活かされています。子どもに対してだけでなく、大人に対しても環境教育・学習の素材にもなり得ます。例えば、福岡県を流れる、生活排水による汚れがひどいと言われた遠賀(おんが)川のケースでは、飯塚市のNPO法人と研究者が廃食用油の回収活動を始めました。その後、次第に住民に活動が浸透していき、現在では市が回収を受け継いでいます。研究や市民の活動は、行政を動かす大きな力ともなるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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近畿大学 産業理工学部 建築・デザイン学科 教授(学部長) 依田 浩敏 先生

近畿大学 産業理工学部 建築・デザイン学科 教授(学部長) 依田 浩敏 先生

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建築・都市環境工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

現在は情報過多の時代だと言えます。だからこそ、真に大切な情報を逃さないよう、アンテナを張って見つけてください。そのアンテナに引っ掛かった情報について、調べ、学び、ほかの人と議論をすることにより、深掘りしてください。その経験が、やがて自分のやりたいことにつながっていくはずです。環境についての知識はあっても、その問題を解決するために、どこでどのように行動を起こせば良いのかわからないこともあるでしょう。その行動の場を作るのが、私の仕事の一つでもあります。一緒に課題に取り組み、環境を変えていきましょう。

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近畿大学は西日本に6つのキャンパスを持ち、15学部49学科を有する西日本最大の総合大学です。常に未来を志向し、「実学精神」を教育の柱としています。世界で初めて成功した「クロマグロの完全養殖」やブタにほうれんそうの遺伝子を組み込んだ「ホウレンソウブタ」など、ユニークで世界レベルの研究成果には大きな注目が寄せられています。
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