日本で暮らす外国人を言葉で支援する「コミュニティ通訳」
社会の構成員である外国人
2012年に入国管理法と住民基本台帳法が改正され、中長期的に日本に暮らす外国人に、住民票が交付されるようになり、外国人が日本社会の構成員として認識されるようになりました。定住や長期滞在する外国人は、結婚、出産、病気などで、司法、行政、医療、教育などのサービスを利用する機会が増えます。しかし、文化の違いや言葉の壁に戸惑いを感じている外国人が多いのも事実です。そうした外国人を通訳、翻訳で支援する「コミュニティ通訳」の必要性が高まってきました。
言葉を訳すだけではないコミュニティ通訳の役割
コミュニティ通訳に求められるのは、通訳としての技術はもちろんですが、さまざまな知識、マナーや態度も大事になってきます。コミュニティ通訳が行うのは、行政担当者や医師などの専門家と外国人の間の通訳です。したがって、正確で忠実な訳出で、外国人が理解できるよう専門的な内容をわかりやすく伝えることに加え、その場のコミュニケーションを調整する能力も重要になります。また、法律相談に訪れた外国人には、行政の情報の方が必要だったということもあるため、コミュニティ通訳は、司法、行政、医療、教育などの制度に関する知識も求められます。さらに、相手を理解するために、多文化社会についての知識も欠かせません。そして、守秘義務の遂行も大切です。相談者は、生活上の悩みを相談するため、通訳者はその秘密を守るのは当然ですが、それだけでなく、相手の立場に配慮した服装や、状況に応じた態度やマナーも求められます。
急がれる専門家の育成
こうしたコミュニティ通訳の必要性は、グローバル化にともなって高まっており、海外では、大学、大学院などでも育成されています。しかし、日本では、自治体などの短期養成講座はありますが、十分な知識を持ったコミュニティ通訳を育成する高等教育機関は少ないのが現状です。外国人を社会に受け入れ共生していくために、しっかりとしたコミュニティ通訳の育成体制の構築が求められています。
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東京外国語大学 言語文化学部 言語文化学科 准教授 内藤 稔 先生
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