ネガティブな考えとどう付き合う? ~落ち込み予防の心理学~

ネガティブな考えとどう付き合う? ~落ち込み予防の心理学~

落ち込みが長期化、重症化するとうつ状態に

人間は、一生懸命がんばってきたことに失敗したり、ほかの人との人間関係で何かつらい思いを味わったりすると、気分が落ち込んでしまうことがあります。落ち込むこと自体は、悪いこととは限りません。落ち込んで自らを振り返り、それを成長につなげることもできるからです。ただし、落ち込んだ状態がずっと続き、さらに負のサイクルに陥ってしまうと、心身にダメージが及んで、うつ状態やうつ病などの発症につながってしまうこともあります。こうした気分の落ち込みとは、どのようなメカニズムで引き起こされているのでしょうか?

気分が落ち込む心理学的メカニズムとは

人間は、外部の環境で起こった出来事を認知(解釈したり、理解したり)します。その認知の違いが、感情や気分、体の反応、行動やふるまいに影響を及ぼします。例えば、大学入試の1カ月前に、それまでA判定だった第一志望の模試の結果がC判定になったとします。この出来事を、あなたが「もうだめだ! 終わりだ!」と認知し、落ち込み続けていると、体調に影響が出る可能性があります。さらに考え続けると、夜も眠れなくなったりして、気分がさらに落ち込む可能性があります。こうしたネガティブな考えや感情のサイクルを長い間、自分の中で繰り返してしまうと、どんどん落ち込みが続き、悪化することにつながるのです。

落ち込みを予防するには?

このような落ち込みを予防するには、まず、起こった出来事に対して自分の中に浮かんだ考え(自動思考)が、そのまま事実とは限らないことを理解する必要があります。明らかに事実であることと、自分の中に浮かんだ「考え」とを区別していくのです。その上で、自分の中に浮かんだ考えについて、一歩引いた目で見て、「それって事実? 事実とは限らないな」と距離をおくことをめざすのです。そして、もっと建設的で適応しやすい「ほかの考え」を思いつくことに取り組んでいきます。こうすることで、うつ状態などの強い落ち込みに陥るのが防げるのです。

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明治学院大学 心理学部 心理学科 教授 伊藤 拓 先生

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メッセージ

「心理学」は、人の心について学ぶ、楽しくて役に立つ学問です。私自身、心理学を学んで本当によかったと思っています。人の心には、自分の心、あなたの友だちの心、そして周囲のいろいろな人々の心が含まれています。
心理学を学ぶと、自分の心についてよりわかるようになり、それを活用すると、自分を幸せにできます。周りの人の心についてわかると、周りの人も幸せにできます。それをどんどん広げていくと、社会に広く貢献できるようになります。このように魅力的な学問である心理学を一緒に学べることを楽しみにしています。

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150年以上もの歴史を持つ明治学院大学。本学の起源は、1863年にアメリカ人宣教医師ヘボン博士が開設した英学塾から始まります。無償で診察を行いながら、英和・和英辞典を編纂し、ヘボン式ローマ字でも有名なヘボン博士。その信念「Do for Others」を教育理念とし、本学ではグローバル社会に対応できる学術知識と教養を培い、他者とともに道を切り開ける人材を育成しています。