ネガティブな考えとどう付き合う? ~落ち込み予防の心理学~
落ち込みが長期化、重症化するとうつ状態に
人間は、一生懸命がんばってきたことに失敗したり、ほかの人との人間関係で何かつらい思いを味わったりすると、気分が落ち込んでしまうことがあります。落ち込むこと自体は、悪いこととは限りません。落ち込んで自らを振り返り、それを成長につなげることもできるからです。ただし、落ち込んだ状態がずっと続き、さらに負のサイクルに陥ってしまうと、心身にダメージが及んで、うつ状態やうつ病などの発症につながってしまうこともあります。こうした気分の落ち込みとは、どのようなメカニズムで引き起こされているのでしょうか?
気分が落ち込む心理学的メカニズムとは
人間は、外部の環境で起こった出来事を認知(解釈したり、理解したり)します。その認知の違いが、感情や気分、体の反応、行動やふるまいに影響を及ぼします。例えば、大学入試の1カ月前に、それまでA判定だった第一志望の模試の結果がC判定になったとします。この出来事を、あなたが「もうだめだ! 終わりだ!」と認知し、落ち込み続けていると、体調に影響が出る可能性があります。さらに考え続けると、夜も眠れなくなったりして、気分がさらに落ち込む可能性があります。こうしたネガティブな考えや感情のサイクルを長い間、自分の中で繰り返してしまうと、どんどん落ち込みが続き、悪化することにつながるのです。
落ち込みを予防するには?
このような落ち込みを予防するには、まず、起こった出来事に対して自分の中に浮かんだ考え(自動思考)が、そのまま事実とは限らないことを理解する必要があります。明らかに事実であることと、自分の中に浮かんだ「考え」とを区別していくのです。その上で、自分の中に浮かんだ考えについて、一歩引いた目で見て、「それって事実? 事実とは限らないな」と距離をおくことをめざすのです。そして、もっと建設的で適応しやすい「ほかの考え」を思いつくことに取り組んでいきます。こうすることで、うつ状態などの強い落ち込みに陥るのが防げるのです。
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明治学院大学 心理学部 心理学科 教授 伊藤 拓 先生
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