生徒の会話を分析し、「わからない」と言いやすい教室に
「わからない」は恥ずかしい?
現在の学校の教室で「わからない」と発言するには、勇気が必要かもしれません。「わかった人は手を挙げて」とか「わかった人はわからない人に教えてあげて」といった教育スタイルがあり、「わからない」と言うことに恥ずかしさを感じさせてしまうからです。その結果、生徒の学習機会や教室での居場所感が損なわれている可能性があります。このような問題をもとに、「わからない」と言いやすい教室をめざした研究が進められています。
援助要請を特定する
学習で困ったときに「わからない」と助けを求めることを学習上の「援助要請」と言います。これまでの主な援助要請の研究では、生徒へのアンケート調査を用いて、生徒の目標と援助要請の関連などが明らかにされてきました。しかし、時間が進行していく授業の中で、いつ困った場面が起こり、どのような助け合いが生まれるかは、自己報告のアンケートでは正確に把握できません。そこで、生徒の発言やノートに書いた言葉を分析する手法を用いた研究が行われています。特に協働学習のようなグループでの会話において、誰からどのような援助要請が行われているかを特定することをめざしています。
協働学習の会話の流れ
グループで協働的に数学の問題を解く会話を分析した研究があります。すぐに答えが出ないような問題の場合、最初は呟きが中心で、ほとんどの発言が援助要請の性質を持っています。しかし、ほかの生徒の発言が誰かのヒントとなり、問題を理解できる生徒が徐々に現れると、会話の内容は変化します。援助要請の発言も初めは内容が漠然としていますが、「それはどうやったの」と具体的な部分を指すようになります。このように、実際の授業での生徒の会話を詳細に観察し、分析することで、援助要請と学びの関係性を明らかにします。「わからない」が「わかりたい」という生徒の意思表示であり、みんなの考えたい問いになると教師が理解することで、学び合いが促進されて、「わからない」と言いやすい教育の環境が構築されると考えられます。
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