正義の女神は何を裁くのか
法律の解釈は何通りもある
ローマ神話の「正義の女神」はユースティティアと呼ばれ、司法の公正さの象徴とされて、日本の最高裁判所にも像があります。片手に天秤を、片手には剣を持っていて、天秤で両方の主張をじゅうぶん聞いた上で、バランス感覚を働かせて最終的に結論を出し、剣で実行するというのです。女神が目隠しをしているのは、両者に対して公正であるためです。
法律と言うと、有罪か無罪かなど、すぐ答えを求めがちですし、裁判では当然、結論を出さねばなりません。しかし、大学で法学を学ぶときは、いくつも答えがあってもよいのです。それは、法律の解釈の仕方は何通りもあるからです。
より良い結論を導き出していく
すべてにおいてベストな結論というのは難しいかもしれません。しかし、より良い結論、解決方法を求めていくのが法律家の仕事です。法律家が法律から推論していく過程には、法律の規定の理解において、法律家らしいものの考え方、ルール的なものは確かにあります。ただ、法律を適用する仕方はいくつもあります。
例えば、自治体が条例を適用して情報公開をするという場合にも、それが公開すべき情報なのか、公開しなくていい情報なのかなど、何通りもの解釈と結論が成り立ちうるのです。
争点を理解するためには
法学というと固くて杓子定規(しゃくしじょうぎ)なイメージを持たれますが、扱っているのはまぎれもなく人間の問題です。トラブルを抱えている人は苦しんで法に助けを求めます。しかし、司法側にはなかなかそういう人間らしい気持ちが通じなかったりもします。
裁判などで問題を「法的に解決する」のが法学の土壌とはいっても、その問題のどこがどう問題なのかを判断するのは司法関係者です。司法に携わる専門家はいろいろな分野を勉強しないと、その事件で問題となっている争点がじゅうぶん理解できません。法律家は、生きた人間を扱う仕事だからこそ、人間の気持ちがわかるプロが必要とされるのです。
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先生情報 / 大学情報
高知県立大学 文化学部 文化学科 教授 岩倉 秀樹 先生
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