講義No.06986 機械工学

制御工学の応用で「あと少し」の力を支援する、福祉・介護ロボット

制御工学の応用で「あと少し」の力を支援する、福祉・介護ロボット

制御工学の基礎は「フィードバック」

制御工学の役割に、安定していないものを安定させることや、決められた目標値を保つことがあります。そこでは「フィードバック」という考えが基礎になります。例えば、エアコンにより部屋の温度を28度に保ちたいとき、外気が入って温度が下がったとします。「その温度変化をセンサで読み取り、設定した温度を保つためにどれだけの熱量を加えるのかを瞬時に計算し制御量を決める」、この繰り返しの流れを「フィードバック」といいます。

残存能力を生かしたアシストの実現

福祉・介護ロボットにも、フィードバックはその形を変えて応用することができます。例えば、立ち上がる動作を支援する装置(システム)があるとします。まず、その装置に人が寄りかかることで、その人が立ち上がるためには「どれだけのアシスト力が必要か」を推定します。つまり、人が支援装置に対して「どれだけ依存しているか」を測ることで、支援装置が人の動作を助けることができます。
使用者や使用環境が異なる場合に、常に一定の力で支援をしてはその人の持つ残存能力を生かすことができません。せっかく持っている能力を発揮できないわけです。制御工学を応用することで、「あと少し」の力をアシストしてほしい、という使用者の気持ちを読み取り、そして適切に助けることが実現できるのです。

さまざまな支援装置への応用

制御工学は、腕の持ち上げ動作を支援する装置、パーキンソン病の患者さんのすくみ足を解消する装置、両腕が使えなくても食事ができる装置などの開発にも寄与します。特に日常生活における生活支援には、身体を預けるだけで適切な支援が得られる新しい技術と安心安全なシステムが求められています。
そのほかにも、医師が操作する手術ロボットにおいて、力覚(物体と接触した際に人が感じる力感覚)を伝達する装置や、農作業で手の届かないところにある果実のやわらかさを確認する装置の開発まで、さまざまな場面で制御工学は貢献しています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

金沢工業大学 情報理工学部 ロボティクス学科 ※2025年4月開設 教授 鈴木 亮一 先生

金沢工業大学 情報理工学部 ロボティクス学科 ※2025年4月開設 教授 鈴木 亮一 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

制御工学、ロボット工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私の研究室では、人の立ち上がり動作や腕を持ち上げる動作、歩行動作など、人々の生活を助けるロボットを開発しています。医療や介護の現場と一緒に装置を作る研究は、人の役に立っていることが直感的にわかり、作ってよかったと感じることができます。
しかし、これらのシステムを開発していくには、まだまだ新しいアイデアが必要です。あなたの持っている斬新なアイデアをロボット開発の力に生かしてほしいと思います。今までの世の中に「ありそうでなかったロボット」の開発をしていきましょう。

先生への質問

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金沢工業大学に関心を持ったあなたは

金沢工業大学では、講義等で「知識を取り込み」、それを仲間との実験・演習の中で「思考・推論」し、組み替え結びつけることで「新たな知識を創造」し、その成果を「発表・表現・伝達」する独自の学習プロセスを全科目で導入しています。さらに高度な研究環境の中で産学協同による教育研究を実践するとともに、夢考房など知識の応用力を高める多彩なフィールドを実現することで、獲得した知識を知恵(応用力)に転換できる「自ら考え行動する技術者」を育成しています。