制御工学の応用で「あと少し」の力を支援する、福祉・介護ロボット
制御工学の基礎は「フィードバック」
制御工学の役割に、安定していないものを安定させることや、決められた目標値を保つことがあります。そこでは「フィードバック」という考えが基礎になります。例えば、エアコンにより部屋の温度を28度に保ちたいとき、外気が入って温度が下がったとします。「その温度変化をセンサで読み取り、設定した温度を保つためにどれだけの熱量を加えるのかを瞬時に計算し制御量を決める」、この繰り返しの流れを「フィードバック」といいます。
残存能力を生かしたアシストの実現
福祉・介護ロボットにも、フィードバックはその形を変えて応用することができます。例えば、立ち上がる動作を支援する装置(システム)があるとします。まず、その装置に人が寄りかかることで、その人が立ち上がるためには「どれだけのアシスト力が必要か」を推定します。つまり、人が支援装置に対して「どれだけ依存しているか」を測ることで、支援装置が人の動作を助けることができます。
使用者や使用環境が異なる場合に、常に一定の力で支援をしてはその人の持つ残存能力を生かすことができません。せっかく持っている能力を発揮できないわけです。制御工学を応用することで、「あと少し」の力をアシストしてほしい、という使用者の気持ちを読み取り、そして適切に助けることが実現できるのです。
さまざまな支援装置への応用
制御工学は、腕の持ち上げ動作を支援する装置、パーキンソン病の患者さんのすくみ足を解消する装置、両腕が使えなくても食事ができる装置などの開発にも寄与します。特に日常生活における生活支援には、身体を預けるだけで適切な支援が得られる新しい技術と安心安全なシステムが求められています。
そのほかにも、医師が操作する手術ロボットにおいて、力覚(物体と接触した際に人が感じる力感覚)を伝達する装置や、農作業で手の届かないところにある果実のやわらかさを確認する装置の開発まで、さまざまな場面で制御工学は貢献しています。
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先生情報 / 大学情報
金沢工業大学 情報理工学部 ロボティクス学科 ※2025年4月開設 教授 鈴木 亮一 先生
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