炭素循環で考える生態系と地球の未来
生態系生態学のマクロな視点
生態系生態学は、植物や動物、微生物など、ある生態系(エコシステム)の中でそれぞれの生物がどのような関わりを持って共存しているのかということについて研究する学問です。ある一種類の生物について深く掘り下げるのではなく、さまざまな生物の相互関係について幅広く考えていく、マクロな視点を持った生物学と言えます。
炭素循環で考える生態系の仕組み
生態系を構成する生物の相互関係を調査する際に指標の一つとなるのが炭素です。例えば、ある森林が年間でどのくらい二酸化炭素を吸収・放出しているかは、木の幹の直径を継続的に測定して、成長の早さを調べることで把握することができます。植物は大気中の二酸化炭素を吸収して、光合成によって酸素を作り出し、大気に放出します。その一方で、落ち葉や枯死した植物は有機物として土壌中に蓄積し微生物によって分解されますが、その際に微生物の呼吸として二酸化炭素が大気に放出されます。実際には大型の哺乳類や小型の昆虫といった動物など、多種多様な生物がこのサイクルに関わるため、それぞれの相互関係はさらに複雑になります。そうした関係の中で行われる、動植物や微生物の呼吸と植物の光合成の差し引きを調べていくと、その生態系でどのような炭素循環のメカニズムが動いているのかを推し量ることができます。
地球温暖化対策の鍵「バイオチャー」
地球温暖化への対策を考える上でも、生態系の炭素循環について検証はとても重要です。その分野の研究の中で最近注目されているのは、枯死した木の幹などを炭(バイオチャー)にして、森林の土壌に再投入するという技術です。安定した状態のバイオチャーは、土壌に投入されても長く分解されずに残ります。つまり、土中の微生物によって放出される二酸化炭素の量を減らすことができるため、生態系全体での炭素吸収量の増加が可能になると考えられています。製造も簡単なバイオチャーは、地球温暖化対策の切り札の一つになるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
玉川大学 農学部 環境農学科 准教授 友常 満利 先生
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