コンクリートから宇宙まで! 小さな微生物が支える大きな世界
極限環境で生きる微生物
「極限環境」と呼ばれる、低温で高圧力の深海などの場所にも微生物はすんでいます。実は人間が作り出したコンクリート構造物も極限環境のひとつです。コンクリートの内部は高アルカリ性で、たいていの生物は生息できません。しかし一部の微生物はそこを好ましい環境として生きることができ、中にはコンクリートの材料に似た「炭酸塩鉱物」を作り出す種類もいます。この機能を活用し、コンクリートに微生物を混ぜ込み、ひび割れを自動的に修復する技術が開発されています。ひびから水が浸入すると内部で眠っていた微生物が目を覚まし、炭酸塩鉱物を作り出して補修し始める、という仕組みです。
海中のコンクリート構造物を守る
コンクリートの劣化は陸よりも海中のほうが早いと考えられています。海中でイオン交換が活発に生じると、コンクリートがもとの性質を保ちにくくなってしまうからです。また、光が届かない深海では低温環境になるため、さらに劣化が進みます。この問題を解決するため、海中にもコンクリートのひび割れを補修できる微生物がいるのか調査が行われています。研究のひとつでは、深海に設置したコンクリートに住みついた微生物の調査を行い、海底にも炭酸塩鉱物を作る微生物がいるとわかってきました。また、海中に設置したコンクリートから、多糖を出している微生物も発見されています。そこでコンクリートに機能を持たせ、多量に産生させた微生物由来の多糖の膜(バイオフィルム)で覆ってしまい、イオンの流出を抑える技術の研究も進められています。
宇宙にも微生物がいる?
また、宇宙も微生物が生息するかもしれない極限環境のひとつです。惑星探査により、土星の衛星である「エンセラダス」には、液体の水(海)、熱源(熱水活動)、有機物、そして純鉄が存在すると考えられています。原始の地球にも、こうした環境があり、エンセラダスに生命が存在する可能性は高いのです。こうした手がかりから探っていけば、地球の初期生命の発展過程や、地球外の生態系を予測できる可能性があります。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋環境科学科 准教授 牧田 寛子 先生
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環境微生物学、生物工学、宇宙生物学先生が目指すSDGs
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