ずっと見続けても疲れない「3D表示の未来の形」

ずっと見続けても疲れない「3D表示の未来の形」

珍しくなくなった3D表示

映像を立体的に見せる3D表示技術は、映画やテレビ、携帯ゲーム機など、私たちの身の回りでもよく用いられるようになりました。その多くは、左目用と右目用の映像を用意し、左右の画像を偏光フィルタで分離するメガネを使用したり、ディスプレイの表面に光を分離する微小なレンズを並べて配置したりすることで、立体的な映像を体感できるというものです。しかし、そうした3D表示技術は、ずっと見続けていると疲れやすいという弱点があります。

3D表示はどうして疲れやすい?

人間がものを見て立体的に感じるのは、4つの要素から成り立っています。左右の目の回転角から三角測量のように奥行きを知覚する「輻輳(ふくそう)」、目がピントを合わせる際に奥行きを知覚する「調節」、左右の目で見る映像で水平にずれている量から奥行きを知覚する「両眼視差」、視点が移動した際の映像の変化から奥行きを知覚する「運動視差」です。これらはすべて無意識のうちに機能し、相互に作用し合っているので、3D表示技術を開発する際には必ず考慮しなければなりません。しかし、従来の3D表示技術では、左右の目に送り込まれる映像から感じる奥行き知覚が、「輻輳」によるものと「調節」によるものとで異なってくるため、その感覚的矛盾が疲労感につながってしまっていたのです。

疲れない3D表示で広がる可能性

より快適で疲れにくい3D表示を実現するために、現在もさまざまな形での研究が続けられています。例えば、100以上の視点から映像を分離して表示する「超多眼式」の3D表示技術を導入すれば、目のピントが合う範囲(被写界深度)が拡大されるため、疲れにくくなると考えられています。こうした技術はエンターテインメント関連のほか、医療現場での腹腔鏡手術やロボットの遠隔操作、自動車のより実用的なヘッドアップディスプレイ、視力に応じて補正可能なディスプレイなど、数多くの分野で応用の可能性が期待されています。

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先生情報 / 大学情報

東京農工大学 工学部 生体医用システム工学科 教授 高木 康博 先生

東京農工大学 工学部 生体医用システム工学科 教授 高木 康博 先生

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工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は、3Dメガネがなくても見ることができる立体ディスプレイの研究を続けています。いつかは家庭用のテレビでも気軽に3D表示を楽しめるようになればと思っていますが、それ以前に、医療の現場で患者さんの手術をする際に立体ディスプレイを活用したり、自動車のフロントガラスに表示するディスプレイなどに応用できればと考えています。
将来の豊かな暮らしを切り開く技術なので、興味のある人はぜひ私たちと一緒に研究しましょう。

先生への質問

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東京農工大学は、自由な発想に基づく教育研究を通し、社会や自然環境と調和した科学技術の進展に貢献し、それを担う人材を育成します。民間機関等と行う大型の共同研究数は全国の大学で第一位です。MORE SENSEを基本理念とし、果すべき役割の大きさ、重さの自覚の上で農学と工学との協働をさらに進展させ、本学の特色を生かした教育、研究、社会貢献、国際貢献を一層前進させるための努力を続けていきます。