「植物」対「病原菌」の攻防! 植物の免疫システム
植物の免疫システム
ヒトの体には、外部からウイルスなどの病原菌が侵入してくると、免疫反応が起こり、それを排除する働きがあります。同じように植物にも病原菌を排除するしくみがあり、これを「病害抵抗性」と呼びます。植物は、病原菌からの攻撃を受けると、周囲の組織を厚くして敵の侵入を防いだり、「抗菌性物質」をつくって対抗するのです。この「抗菌性物質」は、病原菌を分解したり、病原菌の増殖を抑制したりする働きがあります。
DNAの遺伝子情報を伝えタンパク質を合成
植物が周囲の守りを固めたり、「抗菌性物質」をつくるには、タンパク質が重要な役割を果たします。タンパク質はDNAが持つ設計図データに基づいて合成されます。DNA上のデータはまずRNAにコピーされ(「転写」と呼びます)、それを元にタンパク質がつくられます。
病原菌からの攻撃を受けた植物細胞では、特定の化合物がつくられます。この化合物は、いわば「病原菌がきた!」と知らせる信号です。それが合図となって、まずは免疫反応の活性化に必要な特定の転写因子がつくられます。転写因子はタンパク質の一種であり、免疫反応に直接関わるタンパク質の合成を促します。例えるなら、植物の免疫反応において、化合物は見張り役、転写因子は司令部、その司令によりつくられた「抗菌性物質」などは最前線で戦う兵隊のようなものです。
植物の免疫システムを応用して作物の病害を減らす
植物の免疫システムをうまく制御すれば、作物の病害を減らす可能性が高まります。例えば、イネに大きな被害をもたらす「いもち病」という病気がありますが、イネの免疫反応に重要な転写因子のはたらきを制御することで、「いもち病」を含むさまざまな病害に対して強いイネの作出が試みられています。
現状、作物の病害防止という点では農薬にかなうものはありませんが、安全性や環境への影響が問われています。植物の免疫システムを制御することで、農薬を使用量を減らしながら病害を防ぐことが期待されています。
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前橋工科大学 工学部 情報・生命工学群 准教授 中山 明 先生
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