心臓の鼓動をとらえる! 最先端の画像検査技術
突然の心臓発作が起こる前に検査で発見
心臓と血管など循環器の疾患は、場所が場所だけに命に関わるケースが多くなります。中でも、心臓自身に栄養と酸素を送り込む冠動脈が動脈硬化によって狭くなると、血液の流れが悪くなり、心筋にじゅうぶんな酸素が行きわたらずに狭心症や心筋梗塞などの障がいが起こります。これらのいわゆる「冠動脈疾患」は、一刻を争うこともある非常に怖い病気です。冠動脈が健康かどうか、コレステロールなどによってどの程度血管の内壁が狭くなっているかが検査によってわかれば、突然の発作が起こる前に予防措置がとれます。
心臓の動きが手に取るようにわかるCTの開発
これまで心臓の血管検査は、カテーテルという細長いチューブを腕や足の付け根の末梢血管から心臓に挿入して造影剤を注入する方法で、入院を要するうえにリスクもあり患者さんの負担は相当なものでした。けれども近年のCT(コンピュータ断層撮影)技術の発達により、現在ではマルチスライスCTを使って心臓を立体的に、あらゆる角度や方向から手に取るように観察できます。これまで1列だったX線検出器を複数配列したマルチスライスCTは、従来の何十倍もの速度で大量に撮影でき、動いている心臓のすみずみの血管の細部までも鮮明な画像で映し出すことができます。
短時間に膨大な量の画像データを撮影
例えばX線検出器が64列あるマルチスライスCTなら、10秒間に約2000枚の断層写真を撮影できます。従来のCTの撮影速度では脈打つ心臓をとらえきれなかったのですが、2000枚のデータがあればそれを解析処理して、心臓を驚くほどリアリティのある3D画像で見られます。また血管内部の狭まりが鮮明にわかるため、血管内のプラーク(隆起)の場所や破裂しやすさも容易にわかります。そのうえ、日帰りの外来検査ができて合併症の危険がないことも大きなメリットです。心臓の鼓動までも精細な画像でとらえることができるのは、画期的な検査技術の進歩なのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 医学部 医学科 講師 江原 省一 先生
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