ケネディ大統領誕生の背景には、「植物の病気」があった!?
植物の病気が、人間の歴史や生活を変える
1845年、冷害によってアイルランド全土で、当時主食だったジャガイモの病気が発生し、9割以上が食べられなくなりました。この冷害による飢饉(ききん)は1849年頃まで続き、全人口800万人のうち、100万人が餓死し、150万人は食料を求めてアメリカなどへ移住しました。この移民のなかにはケネディ大統領の祖先もいたのです。
またイギリス人の紅茶好きは、それまで飲んでいたコーヒーの原料であるコーヒー豆の不作により、代わりに紅茶を飲んだことで始まったとされています。このように植物の病気が原因で食料問題が起こり、歴史が塗り替えられてしまうことは世界各地で起こっています。
植物の病気は、7割が菌類により起こされる
ジャガイモの病気は、イモを腐らせてしまう「カビ」が原因で、コーヒーの木を枯らしたのは、さび病を起こす「サビ菌」によるものでした。植物が病気を起こす原因は主に4つあり、バクテリア、ウイルス、菌類、微少昆虫です。そのうち菌類による病気が約7割を占めています。日本でも1993年の冷夏では、「いもち病」という稲の病気が発生し、深刻な米不足が起こり、タイ米などの輸入措置がとられました。
TPP発効後は、防疫法の研究がますます重要に
植物の病気を起こす菌類は、さまざまな環境に生息し、常に植物を狙っています。しかし未知の菌類はまだ無数に存在し、病気を発生させる菌のDNAなどを詳しく調べると、実は新種だったという事例が多く存在します。また、菌の研究のためには、菌を培地で育てることが理想ですが、育てられない未知の菌もあり、さらなる技術革新が必要です。
今後、地球上の人口はさらに増加し、食料の需要はひっ迫します。また将来、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が発効すると、これまで以上にさまざまな農作物が国をまたいで行き交い、未知の植物病原菌が日本に入ってくると予想されます。作物を安定的に供給するためには、植物の病気をいかに防ぐかが重要な課題なのです。
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法政大学 生命科学部 応用植物科学科 講師 廣岡 裕吏 先生
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