講義No.10184 生物学

多細胞生物は、いかにして単細胞生物から進化したのか

多細胞生物は、いかにして単細胞生物から進化したのか

多細胞生物の遺伝子を持つ単細胞生物

私たちのような多細胞生物は、いかにして単細胞生物から進化したのでしょうか。これを解明するには、遺伝子レベルで多細胞生物に進化する瞬間をとらえなければなりません。以前は多細胞生物を作る遺伝子は、多細胞への進化時に作られたと考えられていたため、単細胞と多細胞の間のつながりを見出すことができませんでした。しかし、最近の研究では、多細胞生物に進化する直前の単細胞生物の生き残りの中に、多細胞生物のからだを作り上げるための遺伝子を持つ生物がいることがわかってきました。

共通する遺伝子の働きの違い

ヒトのような多細胞生物ができるには、いくつかの条件があります。細胞同士が接着したり離れたりするのをコントロールできること、細胞同士が連絡を取る機能があることなどです。また、細胞が分化して役割を持ち、協調しながら働くことが求められます。つまり1つの生命体として統制が取れることが必要なのですが、多細胞生物にはそれを実現する遺伝子が存在します。単細胞生物にも同じ遺伝子があるとなると、その遺伝子はどういう働きをするのかということが問題になってきます。単細胞生物中のある働きを持った遺伝子が、多細胞生物になってリサイクルされ、多細胞特有の働きを持つようになったと考えられます。

遺伝子の働きの違いはなぜ起こったのか

例えば、動物にはチロシンキナーゼというほかの細胞からのメッセージを含んだ物質を受け取って細胞内に伝える受容体が存在します。まだ予測の段階ですが、これが単細胞生物では環境の何らかのシグナルを受け取る働きがあることが見えてきました。
このように多細胞生物と単細胞生物に共通にある遺伝子を数多く突き止めて、働きの違いを解明すれば、多細胞化のしくみを解明するヒントが得られるでしょう。問題は、なぜそのような変化が起きたのかということですが、これは酸素濃度の急激な上昇など外的な要因によると想像されます。今後は地質学者と共同で、地球環境の変化との関連を研究することも重要となるでしょう。

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県立広島大学 生物資源科学部 生命環境学科 生命科学コース 教授 菅 裕 先生

県立広島大学 生物資源科学部 生命環境学科 生命科学コース 教授 菅 裕 先生

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分子進化発生学、進化学

メッセージ

我々動物は多細胞生物ですが、祖先は単細胞生物でした。あるとき、単細胞から多細胞に進化したわけです。その時何が起こったかを遺伝子を調べることで知りたいと考えています。私は動物に近縁な単細胞生物を研究しています。この生物は、動物がまだ単細胞だったころの生き残りです。
この生物を研究しているのは、実は日本ではここだけ、世界でももう1カ所スペインにあるだけです。あなたが私の研究室に入って、この生物を研究して発見したことは、全部世界初となるでしょう。一緒にこの変わった生物を研究しませんか。

先生への質問

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県立広島大学は、教育、研究、地域貢献、国際交流のいずれにおいても公立大学として一級の大学になっています。「主体的に考え、行動し、地域社会で活躍できる実践力のある人材の育成」を目標に、教養教育では、大学4年間の学士課程教育を通じて実施する「全学共通教育科目」を設定するとともに、専門教育においては、教養教育との連携を図りながら、「専門科目」を系統的に設定することにより、バランスのとれた教育内容を提供していきます。