多細胞生物は、いかにして単細胞生物から進化したのか
多細胞生物の遺伝子を持つ単細胞生物
私たちのような多細胞生物は、いかにして単細胞生物から進化したのでしょうか。これを解明するには、遺伝子レベルで多細胞生物に進化する瞬間をとらえなければなりません。以前は多細胞生物を作る遺伝子は、多細胞への進化時に作られたと考えられていたため、単細胞と多細胞の間のつながりを見出すことができませんでした。しかし、最近の研究では、多細胞生物に進化する直前の単細胞生物の生き残りの中に、多細胞生物のからだを作り上げるための遺伝子を持つ生物がいることがわかってきました。
共通する遺伝子の働きの違い
ヒトのような多細胞生物ができるには、いくつかの条件があります。細胞同士が接着したり離れたりするのをコントロールできること、細胞同士が連絡を取る機能があることなどです。また、細胞が分化して役割を持ち、協調しながら働くことが求められます。つまり1つの生命体として統制が取れることが必要なのですが、多細胞生物にはそれを実現する遺伝子が存在します。単細胞生物にも同じ遺伝子があるとなると、その遺伝子はどういう働きをするのかということが問題になってきます。単細胞生物中のある働きを持った遺伝子が、多細胞生物になってリサイクルされ、多細胞特有の働きを持つようになったと考えられます。
遺伝子の働きの違いはなぜ起こったのか
例えば、動物にはチロシンキナーゼというほかの細胞からのメッセージを含んだ物質を受け取って細胞内に伝える受容体が存在します。まだ予測の段階ですが、これが単細胞生物では環境の何らかのシグナルを受け取る働きがあることが見えてきました。
このように多細胞生物と単細胞生物に共通にある遺伝子を数多く突き止めて、働きの違いを解明すれば、多細胞化のしくみを解明するヒントが得られるでしょう。問題は、なぜそのような変化が起きたのかということですが、これは酸素濃度の急激な上昇など外的な要因によると想像されます。今後は地質学者と共同で、地球環境の変化との関連を研究することも重要となるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
県立広島大学 生物資源科学部 生命環境学科 生命科学コース 教授 菅 裕 先生
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