味を変えてしまう「香り」には、無限の可能性がある
味には、香りも含まれる
味と香りには、どういう関係があるのでしょうか。甘酸っぱい水にオレンジの香りを足すとオレンジジュースになりますが、鼻をつまんで飲むと、甘酸っぱい味しかしないと言います。私たちが「味」と呼んでいるものの一部には、「香り」も含まれているのです。このことから、食品にある香りを加えることで、別の味に変えたり、高級感のある味にしたりすることもできます。ただ、香りを含めた風味は文化や経験も関係していて、いくら高級なメロン味を作っても、そのようなメロンを食べたことがなければ、味のよしあしはわかりません。
曖昧な香りの世界が食品の売り上げも左右する
このように「味」にとって重要な香りですが、その指標は曖昧です。味には、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味という指標がありますが、香りにはそのような指標はありません。香りを表すときは、「~のような香り」というように比喩で表現するしかありません。比喩は人によって受け取る内容が異なるので、大変曖昧な世界です。とはいえ、香りを含めた風味で、私たちは食品を選んでいます。香りが商品の売り上げを左右することは日常茶飯事です。その意味で、香りの開発はとても重要です。食品関連企業や大学では、新しい香りの開発に日々取り組んでいます。
自然界には、未知の香りが無尽蔵にある
新しい香りは、既存の香りを分析して、そこから化学合成で作るという方法があります。しかし、自然界にはまだ抽出されていない香りが無尽蔵にあります。そこで、生物の匂い物質を抽出して、その化学構造を分析して、今までにない香りを人工的に作り出すことが重要です。
また、香りを使って食材の味を変えるという研究もあります。柑橘類の搾りかすを魚に食べさせることで、香りで魚の生臭さを消すという方法も開発され商品化されています。この方法は、ジュースなどの残りカスを有効利用できるという点でも注目されています。
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