講義No.13784 生物学 医学

ウイルスから読み解く生命のメカニズム

ウイルスから読み解く生命のメカニズム

ウイルスとは

ウイルスの構造は非常にシンプルで、遺伝物質であるDNAまたはRNAとそれを包むタンパク質や脂質の膜だけでできています。そのため、宿主となる細胞に感染して、細胞が持つ様々なシステムを借用しなければ増えることはできません。

細胞吸着のカギは糖鎖?

マウス白血病ウイルスの場合、宿主の細胞膜にあるタンパク質を受容体として利用し、ウイルス表面のスパイクタンパク質を結合させて細胞内に侵入します。近年、細胞への結合には細胞表面にある「糖鎖」も関係していることがわかってきました。単糖が鎖状につながった糖鎖は、DNA、タンパク質につぐ第三の生命鎖と呼ばれており、枝分かれや鎖の長短、末端構造などが多様で複雑な生体物質です。
インフルエンザウイルスの場合、受容体となるのはこの糖鎖です。インフルエンザウイルスのスパイクタンパク質であるヘマグルチニンは糖鎖の末端にある特定の3糖に結合することが知られています。さらに鎖の長さや枝分かれ構造、末端から3つ目の糖への化学修飾や分岐などもウイルスの結合に影響することがわかってきました。インフルエンザウイルスが結合する糖鎖構造の研究は、インフルエンザウイルスの特徴の1つである人や豚、鳥など宿主の種を超えた感染のメカニズム解明につながることが期待されます。

たった11塩基がスプライシングを制御

細胞内でウイルスが増殖するためのタンパク質合成には、DNAから転写されたRNAの不要な部分を除去する「スプライシング」の過程が必要です。マウス白血病ウイルスの全遺伝子約8000塩基のうちの特定の11塩基を壊すと、スプライシングが正しく行われないことが突き止められました。つまり、この11塩基に何らかの因子が結合してスプライシングを制御していると予想され、それを実際に証明するための実験が進められています。遺伝子の構造が単純なウイルスでスプライシングの基本的なメカニズムが明らかになれば、スプライシング異常を原因とする人の疾患についての理解にもつながると期待されます。

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創価大学 理工学部 共生創造理工学科 教授 高瀬 明 先生

創価大学 理工学部 共生創造理工学科 教授 高瀬 明 先生

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ウイルス学

メッセージ

将来の夢が見つからずに悩むこともあるでしょう。私も高校生の頃は迷うことが多々ありました。でも将来の夢や進路は必要なときに見えてくるものなので、焦らなくても大丈夫です。大学を選ぶときは損得勘定ではなく、好きだなとかかっこいいなという素直な気持ちで選ぶほうが後悔しないと思います。仮に選択を間違えても修正はいくらでも利くので、深刻にならず気を楽にして、今の自分の「好き」を大切にしてほしいです。好きなことが見つからないという場合は、ぼーっと過ごす時期があってもいいと思います。

創価大学に関心を持ったあなたは

創立以来、学生と教職員が大学を創る者として、互いに対話、研鑽を重ねながら大学の価値を高めてきました。こうした教育・研究および社会貢献の成果は、文部科学省のGP(Good Practice)採択など、外部からの高い評価となり、普遍的な価値として、現代の大学教育に大きな示唆を与えています。また国際化が叫ばれる中、62カ国・地域、225大学との交流協定は、真の国際人養成に大いに貢献できることでしょう。