傷ついたDNAを修復する不思議なメカニズムとは?
生命の設計図を守る仕組み「DNA修復」
2015年のノーベル化学賞は、英米の研究機関に所属する3氏が受賞しました。受賞テーマは「DNA修復機構の解明」です。生物は、DNAによって遺伝情報を伝えています。
私たち人間が生きるために必要な設計図を扱うDNAは、タバコなどに含まれる化学物質や紫外線の「攻撃」により、ダメージ(化学反応)を受けています。細胞内では、設計図通りに遺伝情報を伝えるために、傷をいち早く察知し、急ピッチで傷の修復作業が行われています。このメカニズムを「DNA修復」と言います。私たち人間をはじめ、植物、微生物などあらゆる生物が、種を存続させるためにDNA修復のメカニズムを持っていることが明らかになっています。
あらゆる生命体が持つ高度な防御システム
例えば、大腸菌などの細菌は一般的に35~37℃で増殖し、高温になるとタンパク質が固まり、やがては死滅してしまいます。反対に、火山や温泉地などで生息する好熱菌は、60~100℃の高温でも細胞が活発に増殖します。また、植物は効率よく日光を採り入れるために、太陽の方向を向きますが、同時に紫外線の影響を受けるため、太陽光に含まれる別の波長の光を使って傷を修復しています。地球上には数えきれない生命体がいますが、微生物には微生物の、植物には植物の高度な防御システムが存在し、DNA損傷を効率よく修復し、DNA複製が正確に行われるための驚くほど精密な仕組みが備わっているのです。
不思議に挑み、なぜを明らかにする生物学
生物学は、こうした生物が持つ不思議に挑み、DNAやタンパク質という分子のレベルから「なぜこういったことが起こるのだろう」「なぜこういう仕組みを持っているのだろう」という「なぜ」を明らかにする学問です。自然界にはまだ解明されていない不思議がたくさんあります。研究が進み、生物の「なぜ」が解明されることによって、病気の治療や創薬への応用が期待されているのです。
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国際基督教大学(ICU) 教養学部 アーツ・サイエンス学科 教授 布柴 達男 先生
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