小惑星探査で解き明かす惑星の起源~「はやぶさ2」の使命とは~
惑星形成の「失われた鎖」をつなぐ「小惑星探査」
広大な宇宙に太陽系ができてから現在の地球まで、惑星がどう進化してきたかという成長史の解明は、惑星科学や天文学の大きな研究目的です。天文観測装置の高性能化で現在の状態は観測できますが、ガスと塵(ちり)から始まった過去46億年間は観測不可能な領域で、「missing link(失われた鎖)」と呼ばれています。
この惑星の成長過程の記録という鎖をつなぐ鍵が、「小惑星探査」です。小惑星は惑星の赤ちゃんから青年くらいまでの状態を調べるのに適した場所で、惑星のさまざまな成長段階を凍結したタイムカプセルとも言えます。
地上に落ちた惑星のかけら、隕石との対応
太陽系に約60万個ある小惑星は、色や明るさの違いでいくつかのタイプ分けや物質予想もされていますが、天文観測だけでは実際の物質はわかりません。しかし、地上に落ちた小惑星のかけらである「隕石」は調べることができます。隕石と小惑星から実際に採取した試料を対応させることで、研究は大きく進むのです。
2010年、小惑星探査機「はやぶさ」が、世界で初めて小惑星から持ち帰った試料(塵)と隕石の対応が確認されました。続いて2014年12月、別のタイプの小惑星探査のために「はやぶさ2」が打ち上げられました。
太陽系の歴史・生命の起源解明への期待
「はやぶさ2」の使命は、炭素質コンドライト隕石という隕石との類似が予想される小惑星「Ryugu(リュウグウ)」から試料を採取し確認することです。Ryuguはその軌道から、太陽の熱で表面が焦げ炭素化している可能性があるので、今回は直径13cmほどの銅球を高速でぶつけて穴を開け、試料を採取して2020年に地球に戻ってくる予定です。
対応すると予想される炭素質コンドライト隕石は、水と有機物を多く含み、太陽系の歴史や生命の起源の解明にもつながるのではと考えられています。またひとつ、失われた鎖をつなぐ研究が進むことが期待されているのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 理学部 惑星学科 教授 荒川 政彦 先生
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