小さなセンサで医療を助け、未来を変える
安価かつ小型のセンサで健康を守る
スマートウォッチで脈拍数や皮膚の表面温度を日常的にモニタリングできるようになりました。これは、安価なシリコンフォトダイオードが普及したことによります。
ただし、シリコンフォトダイオードで検出できる波長範囲は1μm(マイクロメートル)までに限られているため、深部体温といった身体の奥の状態を測ることはできません。1μm以下の短近波長赤外線を測るためには、大きく高価な装置が必要とされています。より安価で小型の装置で測定できるようにするために、シリコンを材料としたオンチップの振動型検出器が提案されています。
オンチップの短近波長赤外線センサ
振動型の光検出器は、振動子に光が当たると温度が上がり、共振周波数が変化することを利用して、光を測定するものです。シリコン製のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子に金のグレーティング(格子構造)を加え、そのピッチを変えることで光吸収ピーク波長を制御することが可能となり、高い熱交換効率を実現します。これで特定の波長を検出するためのセンサが実現でき、ピッチの異なる振動子を基板に並べればオンチップの分光器が製作できます。現在は研究室レベルで実現している段階で、製造技術の確立に向けて研究が進められています。
医療以外にも広がる用途
このようなセンサが実用化されると、ウェアラブルデバイスで深部体温や血中アルコール濃度が測れるようになるほか、多種多様な用途が考えられます。臓器のがんの部分だけをくっきりと識別することができるので、手術に使用する医療機器の先端に取り付ければ、切除が必要な部分だけを正確に取ることが可能です。人間の身体以外も計測できますから、スマホにセンサを取り付けて、表面は問題なく中で傷んでいる果物や野菜を識別することや、自動車に取り付けて道路の水たまりが凍っているか否かを判別することもできるようになります。極小なセンサが未来を変えていくのです。
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