小さな石のかけらから、地球の壮大な動きを知る
地球の速い動きと静かな動き
地球の内部は、マントルの対流やプレート運動などによって絶えず動いています。さまざまな動きの中でも、地震が起こったときの断層の動きは秒速1mほどの速い動きです。一方で、プレート運動自体は1年に数センチほどのゆっくりした動きであり、速度にすると秒速1ナノメートルほどしかありません。どちらも、その動きを実際に目で見ることはとても難しいです。そのため、地球の内部の動きを実験室で再現し、さまざまな現象の解明につなげています。
実験に使う岩石を採る・作る
地球の中は高温・高圧の世界です。実験では地球内部の環境を再現しながら、地球内部を構成する岩石を変形させたときにかかる力などを測定します。実験に用いるサンプルは、地球の中の実際に変形している場所から採取したいところですが、人間が掘れる深さはせいぜい10km程度しかありません。大きな地震の震源の深さは地下10~30kmなので、震源から直接サンプルを採ることができません。そこで、将来沈み込むと予想されるプレート上から岩石サンプルを採取し、その岩石が沈み込んだときにどのような変形をするのかを調べています。また、地球内部のマントルなどはどのような岩石でできているか大体わかっているので、そのレシピから「人工岩石」を作成して実験に使用することもできます。
小さな実験で大きな動きを予測
実験では地球のどこで起こっているどんな現象を再現したいかによって、サンプルだけでなく実験装置も使い分けています。地球の深いところを再現する実験では、非常に高い圧力をかけるために硬いダイヤモンドとダイヤモンドの間に小さなサンプルをはさんで、押し付けたりねじったりします。地球の奥深いところを再現する実験のサンプルの大きさは、直径0.2mm、厚さ0.03mmほどです。小さすぎて変化を目視で測ることはできないので、X線を当てて測定したデータをコンピュータで解析します。ごくごく小さな岩石を用いて特性を調べることで、地球規模の壮大な動きを予測しているのです。
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