植物の普遍的メカニズム解明のカギはコケにあり!

最古の陸上植物の面影
コケはどこにでも見られる身近な植物です。コケ植物には根・茎・葉の区別がなく、被子植物のような花も種子もつけません。維管束もありません。このようなコケ植物の特徴は、実は植物進化の謎を解き明かすカギとなる可能性があります。
今から約5億年前、植物が水中から陸上に進出しました。その陸上植物の祖先から最初に分岐したのがコケ植物のグループです。つまり、コケ植物には陸上植物の祖先が持っていた特徴が色濃く残っていると考えられるのです。そこで全ゲノムが解読されているゼニゴケを対象にした遺伝子レベルの研究が行われています。
コケから探る栄養繁殖の進化
コケがどのように厳しい環境の中で生き抜き、効率的に殖えるのか? まだわかっていないことが少なくありません。その一つが「栄養繁殖(クローン繁殖)」の仕組みです。栄養繁殖とは植物の組織の一部から新しい個体が増える繁殖の仕方で、ジャガイモやタケノコはその代表例です。ゼニゴケの栄養繁殖では、葉状体の表面に作られた100個から200個の無性芽が切り離されて、新しい個体として成長します。この栄養繁殖に関係する器官で特異的に働く遺伝子が発見されました。そして様々な陸上植物のゲノムを比較した結果、ゼニゴケの栄養繁殖と、植物で広く見られる「腋芽(えきが)」と呼ばれる芽が出る仕組みとで、同じ遺伝子が働いていることがわかりました。つまり、陸上植物の祖先が持っていた栄養繁殖の仕組みが、進化の過程で被子植物などが芽を増やす仕組みに転用されたと考えられます。
植物に普遍の原理に迫る
ゼニゴケの葉状体の裏側にある仮根は、植物体を地面などに固定するためのもので、長らく栄養を吸収する能力はないと考えられていました。ところが仮根の組織の遺伝子発現を調べたところ、被子植物に見られる栄養吸収のための輸送体タンパク質がたくさん存在することがわかりました。
このようにコケ植物から、植物全体に共通する根本的なメカニズムや進化を解明することをめざした研究が進められているのです。
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