究極の飛行機? 極超音速機の開発から夢のスペースプレーンへ
極超音速機を生み出す
マッハ5で飛行する極超(ごくちょう)音速機を開発し、東京とアメリカ西海岸とを片道約2時間半で行き来できるようにする、そんな夢のような研究が進んでいます。その実現には、マッハ5に達する超強力なエンジンの開発、従来の航空機とは比べ物にならない激しい騒音への対策、空気の大きな抵抗や圧縮による高温への対策などが必要です。いわば極限状態で飛行可能な航空機を、設計や制御の最適化の研究によって開発しようというものです。
観測用ロケットを利用して飛行実験
極超音速機の研究では、各要素で技術開発を行ったのち、それらを統合したシステム全体がどのように作用するか、実験データを積み重ねる必要があります。そのためには飛行試験を行わなければなりません。その方法の一つとして、既存の観測用ロケットの先端に搭載した小型実験機を大気圏外で分離し、大気圏に再突入させることでマッハ5程度の試験環境をつくることが検討されています。既存の観測用ロケット打ち上げシステムを利用するので準備期間が短くてすみ、コスト的にもメリットがありますが、試験環境がわずか数秒しか持続しないのが課題です。そのため、機体を水平姿勢近くまで引き起こし、より長い時間、試験環境が持続できないか検討が進められています。
「スペースプレーン」誕生となるか?
観測用ロケットによる飛行実験で成果が得られれば、極超音速で巡航できる実験機、さらに離着陸可能な無人機、そして極超音速の旅客機を順次開発する計画です。極超音速旅客機が開発されれば、次は宇宙まで行って帰ってくる「スペースプレーン」の実用化も現実味を帯びてきます。スペースプレーンはロケットのように使い捨てずにそのままで繰り返し使うことを前提としているため低コストで、「宇宙観光」や「宇宙輸送」の実現に近づきます。
スペースプレーンの構想自体はかなり以前から研究が進められていますが、いまだ実現にはいたっていません。極超音速機の研究から夢のスペースプレーンが実現するのか、期待が高まります。
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先生情報 / 大学情報
東京大学 工学部 航空宇宙工学科 教授 土屋 武司 先生
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