火星に生命? 地球外生命の探索には、まず地球を知れ!

火星に生命? 地球外生命の探索には、まず地球を知れ!

地球には常に海が存在していた

広い宇宙で地球外生命の住む天体を探し出すためには、まず豊かな生命を育んできた地球の環境について知ることが第一歩です。例えばかつて火星にあった海はもう存在していませんが、地球の海は約40億年前に地表に誕生して以来、今に至るまでずっと液体の状態で存在し続けています。生命の誕生や進化に必要だと考えられる海の持続的な存在が、なぜ地球では可能なのでしょうか。

6億年後に地球の海がなくなる?

地球には、地表の環境を一定に保つシステムが備わっています。例えば太陽から届くエネルギー量が変化しても、それに応じて大気中の二酸化炭素濃度が増減するため、これまで地表の温度が大きく変わることはありませんでした。この恒常性を担っているのは「プレートテクトニクス」による地球内部の物質の循環で、特に水の循環は海が持続的に存在する理由を知る鍵だと考えられています。
海底の岩石に取り込まれた水はプレートとともに地球内部に沈み込んだあと、マグマに吐き出されて地表に戻ります。この水の動きを知るために、海底や地下から掘削で得た岩石の含水量などを調べる地質学的な調査が行われています。これらの調査から、地表に戻る水の量が近年減っていることがわかりました。これは地球内部の温度の低下とともに含水鉱物が地中で分解されなくなっているためです。ここから概算すると、約6億年後には地表の海はすべて地球内部に取り込まれてしまう可能性があります。

火星の地下に水がある?

掘削が不可能なより深い地球内部を知るためには、地震波を利用します。地球上の各地点にある地震計が観測した地震波の速度の違いから、水が地球内部のどこにどのくらいあるのかが調べられています。
この地震波による地球内部のデータをもとに、火星探査機「インサイト」が火星に設置した地震計のデータを検証すると、結果によっては火星の内部に水が存在する可能性も十分考えられます。地球外生命発見の第一号は、火星からかもしれないのです。

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広島大学 理学部 地球惑星システム学科 教授 片山 郁夫 先生

広島大学 理学部 地球惑星システム学科 教授 片山 郁夫 先生

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地球惑星科学

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メッセージ

地球の歴史や進化、地球以外の惑星の状態など、地球惑星科学が扱う事柄は、まだほとんどわかっていないことだらけです。この先、驚くような世紀の発見が待っているかもしれません。また地球の歴史を知るということは、なぜ私たちがいるのか、これから私たちがどうなるのかを知ることでもあります。地球惑星科学は発展中の学問で、物理や化学、生物、ときには数学の力も借りて取り組むべき難問が山積みです。難問ながらも楽しい地球惑星科学を、あなたと一緒にどんどん開拓していければと思います。

先生への質問

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広島大学は社会に貢献できる優れた人材を育成し、科学の進歩・発展に貢献しつつ、世界の教育・研究拠点を目指す大学です。緑豊かな252ヘクタールという広大な東広島キャンパスを抱え、また、国際平和文化都市である広島市内等のキャンパスを含め、12学部、4研究科、1研究所、大学病院並びに11もの附属学校園を有しています。 新しい知を創造しつつ、豊かな人間性を培い、絶えざる自己変革に努め、国際平和のために、地域社会、国際社会と連携して、社会に貢献できる人材の育成のために発展を続けます。