「次世代メモリ」「ユビキタス社会」を実現する強誘電体とは?

「次世代メモリ」「ユビキタス社会」を実現する強誘電体とは?

パソコンにとって理想のメモリとは

パソコンのメモリは高速でデータの読み書きができますが、電源を切るとデータは消えてしまいます。一方、USBメモリやハードディスクは電源を切ってもデータは残りますが、スピードが遅く耐久性もありません。もしこれらの電子デバイスの優れた点だけを備えたメモリがあったら、電源スイッチを入れるとすぐに使用できるようになり、耐久性も優れたものになるはずです。電源を入れっぱなしにする必要もなくなり、省電力にもつながります。

夢のパソコンを実現する「強誘電体メモリ」

しかし、このようなメモリは現在使用されている半導体メモリでは難しいと言われています。そこで注目されるのが、セラミックスのような材料を使った強誘電体メモリです。誘電体は、導体や絶縁体と違い電気を蓄える性質を持っています。誘電体に電気を加えると、結晶内部のイオンがプラスとマイナスに分かれて電気が蓄えられます。また、必要な時に電気を取り出すことも可能です。通常の誘電体は電気を切ると元に戻りますが、強誘電体はイオンが分かれたままの状態を保持します。これによって大量のデータを記憶することができます。この性質を利用したのが「強誘電体メモリ」で、次世代メモリのひとつです。

捨てられている身のまわりのエネルギーを活用

誘電体の中には、力を加えると発電する「圧電体」という物質もあります。これを生かせば、今は捨てられている振動や圧力など身のまわりのエネルギーを電気に変えることが可能です。車の振動がその例です。これは「エネルギーハーベスティング(環境発電技術)」と呼ばれています。現在は発電された大きな電力を配分したり、バッテリに蓄えたりして使用しています。それでは、社会のいたるところに情報機器が存在するユビキタス社会を実現することはできません。配線せずに永続的に電気を供給する分散化された電力源が必要です。誘電体という材料は、未来社会を実現するカギとなっているのです。

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先生情報 / 大学情報

福岡大学 工学部 電気工学科 教授 西田 貴司 先生

福岡大学 工学部 電気工学科 教授 西田 貴司 先生

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電気工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は電子材料や電子デバイスに使われる新材料の開発やその新しい使い方を考える研究をしています。最近、取り組んでいるのは、「誘電体」という電気を蓄えたり生み出したりする不思議な力を持つ材料です。
新材料が生まれると全く新しい製品が誕生して、社会ががらりと変わります。電灯がLED電球に変わったのもその一例です。スマートフォンやパソコンにも新材料が使われています。あなたが、材料の最先端に興味を持ち、大学で学び、いつか未来の材料を生み出してくれることを願っています。

先生への質問

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