フランスの思想家モンテスキューの小説『ペルシャ人の手紙』の面白さ
ペルシャ人の目で見たフランスを描く
『法の精神』で知られる18世紀のフランス人思想家モンテスキューは、若い時に『ペルシャ人の手紙』という小説を書きました。この小説は、使節としてフランスに滞在した2人のペルシャ人貴族、ユスベクとリカから祖国の家族や友人に送られた手紙を集めて紹介する、という形で出版されました。フランスで出版するために、ペルシャ語を翻訳したという設定です。しかし、この設定はすべて虚構で、モンテスキューが自分の名前を出さずに、すべてを書いた書簡体小説だったのです。
フランス社会や為政者、宗教をからかう
当時、ペルシャは専制国家、一方、フランスはルイ14世による絶対王政でした。宗教はイスラム教とキリスト教、また、ペルシャは一夫多妻制ですが、フランスは一夫一妻制です。小説は、宗教も社会制度もまったく異なるペルシャ人が、フランスをどう見るか、という視点で書かれています。
フランス人なら気づかないこと、語りづらいことも、ペルシャ人なら自由に語ることができるため、そこにはフランス社会や為政者、宗教への批判が見られます。例えば、キリスト教の教義に三位一体(さんみいったい)がありますが、彼らは、何で1+1+1が3ではなくて1なの?と問います。また、キリスト教では、パンをキリストの体と言いますが、ペルシャ人は、「ただのパンにすぎない」とからかうのです。
ヨーロッパ文化に感化されるが、事件が!
その一方で、彼らはヨーロッパで生まれた近代科学に感動し、自然現象を法則で説明するという新しい考え方を吸収します。また、男性と女性が対等に話すのを見て、一夫一妻制を評価するようになるのです。ところが、ユスベクに事件が起こります。母国で彼の妻たちがほかの男と付き合うなど、彼に対する「反乱」を起こすのです。罰を与えようと指令を出しますが、遠隔地にいるため事態は悪化するばかり、ヨーロッパに感化された彼は、ペルシャに「復讐(ふくしゅう)」されてしまうのです。
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先生情報 / 大学情報
福岡大学 人文学部 フランス語学科 教授 辻部 大介 先生
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