「犯罪心理学」はさまざまな学問と関連して成り立っている!
犯罪の原因はさまざまな要因が絡み合う
「犯罪心理学」は犯罪・非行の原因を解明するための学問です。例えば万引きの場合、興奮やスリルを味わうために、また仲間うちで自分の存在感を誇示するために盗む場合もあるでしょう。しかし、人は心理的な理由だけで罪を犯すわけではありません。生活に困って、といった経済的な理由も考えられますし、生い立ちや家庭環境に原因がある場合もあります。その遠因として差別や格差といった社会的問題にも目を向ける必要もあるでしょう。また、そもそも親からの遺伝や脳の機能不全などの生物学的な原因も考えられます。このように犯罪の原因にはさまざまな要因が絡み合い、互いに影響し合うものなので、心理学のみでは説明できず、社会学や生物学など多くの学問の知見が必要となるのです。
犯罪心理学の成果は実際の社会で役立っている
犯罪心理学は、その成果が警察の捜査や公正な裁判、また社会復帰のための更生プログラムの開発などに寄与しています。つまり基礎的な研究だけでなく、応用面でのニーズが高い学問です。
例えば、警察の取り調べでは供述を引き出すためには被疑者の心情理解が不可欠ですが、そこに犯罪心理学の知見が生かされます。また裁判では目撃者の記憶に基づいた供述、つまり目撃証言の信頼性判断が裁判の行方に大きな影響を及ぼします。犯罪の原因を明らかにすれば、より実効性の高い犯罪者の更生プログラムも開発できます。
捜査に直結する研究も行われている
犯罪捜査に直結した研究も行われています。「犯罪者プロファイリング」は、過去の犯罪データベースから新たな事件の犯人像を予測する方法です。例えば連続放火犯の場合、バイクに放火するのは十代の若者が多く、ゴミに火をつけるのは四十代の中年男性が多いことがわかっています。また「ポリグラフ検査」は、犯行記憶を調べ、被検者が犯人かどうか判断する手がかりを得るための検査です。生理的指標や質問方法や生理的指標を工夫し、検出精度を高める研究も行われています。
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先生情報 / 大学情報
福岡大学 人文学部 文化学科 准教授 大上 渉 先生
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