人間が認知するリアリティをコンピュータで創造

人間が認知するリアリティをコンピュータで創造

VR=ゴーグルではない!

「VR(Virtual Reality、人工現実感、仮想現実)」といえば、ゴーグルやヘッドマウントディスプレイ(HMD)が思い浮かぶかもしれません。しかし、人の視覚や聴覚に働きかけるゴーグルやHMDはVRの一部にすぎません。VRとは、視覚や聴覚だけでなく、嗅覚や味覚、触覚、さらには痛覚まで人のあらゆる感覚に働きかけて、「リアリティ」を感じさせる仕組みのことをいいます。
このVRなどの技術を含めて、人が認知してリアリティを感じるものを、コンピュータを使ってつくるのが「コンピュテーショナルリアリティ」です。

電気で味覚をコントロール

コンピュテーショナルリアリティの究極の目標は、人のすべての感覚に働きかけてリアリティを感じさせることですが、まずは実現可能な技術が開発されています。例えば視覚では、本物が発するのと同じような光の情報を計算するCGや、それを出力する3Dディスプレイなどです。
一方、味覚と嗅覚は化学物質を知覚するため物理的な制御が難しく、VRの分野でも技術開発が進んでいません。それでも味覚に対しては、電気を使って制御する技術が研究されています。口に入った食べ物は水溶液中の化学物質として細胞に認識されるので、その化学物質を電気でコントロールして味の強弱を操作します。これにより、炭酸飲料の味の変化を感じられる成果が上がっています。

ゲームから医療まで

いまやコンピュータゲームは世界中で何億もの人が没頭する娯楽であるため、コンピュテーショナルリアリティの技術はゲーム市場に大きな影響を与えるでしょう。それだけではなく、例えば専用のメガネをかけなくても立体映像が見える3Dディスプレイは内視鏡手術にも有用で、医療をはじめさまざまな分野への応用が期待されています。
ところで、「リアリティ」という言葉は非常に抽象的な概念です。仮想のリアリティを追究するためには、人が認知するリアリティとは何か、という哲学的な考察も必要です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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法政大学 情報科学部 ディジタルメディア学科 教授 小池 崇文 先生

法政大学 情報科学部 ディジタルメディア学科 教授 小池 崇文 先生

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先生が目指すSDGs

メッセージ

私は情報科学部で日々、コンピュータのプログラミングや数学を教えていますが、そういった専門教科と同じくらい教養が大切であることをひしひしと感じています。VRの研究は技術開発ですが、人の感覚を扱うので、数式では表せない一般教養や一般常識が欠かせないのです。したがってVRなどの研究をめざすのであれば、技術開発に必要な数学や物理学を勉強するだけでなく、人間そのものにも興味を持って、映像や映画、文学といった文化や、社会、政治についての知識もたくさん学んできてほしいです。

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