アリ型レスキューロボットはフェロモンで意思疎通?
生物を規範にして生物を超える!
足がないのに動けるヘビや、高速で走れるチーターなど、生き物の優れた運動知能をロボットで再現することでそのメカニズムを解き明かし、さらに生き物を超えたロボットを作る研究が行われています。
その一つがアリロボットです。一匹のアリの知能は高くありませんが、群れでのアリの行動は非常に統率されています。アリのコミュニケーション手段はフェロモン(匂い)です。えさを見つけたアリは、道しるべとして巣までの道のりにフェロモンをつけ、それをほかのアリがたどることで行列ができます。
フェロモンでコミュニケーションするロボット
これをヒントに、フェロモン(アルコール)でコミュニケーションするロボットが開発されました。ロボットはランダムに動き、えさとなる物体を見つけると押して運ぶ動作をしますが、一台で動かせない場合はフェロモンを出します。するとフェロモンを検知したほかのロボットがえさに集まり、協力して運搬します。匂いによるコミュニケーションの特徴は、ロボット間の直接のコミュニケーションがないため、単純な仕組みで群れを統制できることです。反対に一台のリーダーロボットが全体に指令をするようなシステムでは、大規模な群れを制御するのは大変です。またリーダーが故障すると全体が機能しなくなってしまいます。
アリロボットは、群れの中の何台かが壊れたとしても全体では機能できるため、災害現場にも適用できると考えられます。
宇宙開発から災害救助まで
アリには、群れのために一部のアリたちが連なって橋を作るといった「利他行動」が見られます。これをヒントに、月面基地を作るためのモジュラーロボットが開発されています。クローラやアームなどのモジュールをいろいろと組み合わて構成した変幻自在なロボットを月面で運用すれば、運搬量を減らしてロケットの打ち上げコストを抑えることができます。また、宇宙空間という過酷な環境に耐えうるロボット技術は、地上での災害救助に応用できると期待されます。
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大阪工業大学 工学部 電子情報システム工学科 教授 松野 文俊 先生
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