誰もが知っている「記憶」には、知られていないことがたくさんある!
単に「覚える」だけではない「記憶」の機能
「記憶」と聞いて、どんなことを思い浮かべますか? 英単語などを「暗記」する力ですか。何かの「思い出」でしょうか。確かに、そのような「過去の情報をしまっておく」のも記憶ですが、記憶の働きはそれだけではありません。例えば、友人とお菓子の話をしているとき、あなたは、相手の話を理解するのに、まず記憶を使っています(例えば「クッキーとはこのようなお菓子だ」)。そして、相手の話を覚えておきながら、自分が先週食べたお菓子のことを思い出し、記憶の中の日本語を使ってそのお菓子のことを表現します。このように「記憶」は、日常生活のあらゆる場面でいつも使われているのです。
脳内の「ハードディスク」と「メモリ」
大容量データのダウンロードを始めたとたん、パソコンやスマートフォンの動きが遅くなってイライラした経験はありませんか。人間の記憶も、これに似ています。
暗算で、2桁×2桁の計算をやってみてください。1桁目で繰り上がった数字を覚えつつ、2桁目を計算すると、1桁目よりもグッとスピードが落ちるのではないでしょうか。ハードディスクに余裕があっても、データ処理などでメモリがフル稼働していると、パソコンの動きは遅くなります。同様に人間の記憶の機能も、メモリの稼働状態によって処理能力が変化するのです。心理学では、このような記憶を「ワーキングメモリ」と呼んでいます。
真っ赤なバナナの記憶は、いつまで残る?
「色」と「記憶」との関連も、興味深い研究テーマです。「バナナ、食べる?」と手渡されたバナナが、もしも真っ赤や紫色だったら? 通常、バナナは黄色いものだと誰もが思っていますから、あり得ない色のバナナを手渡された記憶は、長期間残りそうな気がしませんか? しかし、実験をしてみると、真っ赤なバナナや紫色のバナナはバナナらしくないため、忘れてしまいやすいという結果も出ています。
「記憶」という、誰でも知っている脳の働きも、心理学では多様な角度から研究できるのです。
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広島大学 教育学部 准教授 森田 愛子 先生
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