実用化はもうすぐ! 水素エンジンがもたらす未来
ガソリンの代わりに水素を使う
自動車やオートバイを動かすエンジンは、現在、石油に由来する燃料を使って動かすものが大半を占めています。しかし、石油は燃焼によりCO₂を排出するため、その代替となるような新たなエネルギー源を用いたエンジンが研究されてきました。その中の1つが「水素エンジン」で、水素と空気の混合気を燃焼させて動かします。
ガソリンエンジンと同じ構造で動く
水素エンジンのメリットは、ガソリンエンジンとほとんど同じ構造で動作させられる点です。混合気をターボチャージャーで燃焼室に送り込んで燃焼させる際、水素はガソリンよりも、混合気に点火するスパークプラグに電荷が残りやすいため、燃焼室の外で燃焼が起こる「バックファイア」が発生する課題がありました。しかし、スパークプラグにアースをつけたり、システムの変更などの改良で、課題も解消されてきました。現在、水素エンジンに変更する前のベースエンジンの9割に相当するパワーを出せるようになりました。燃焼により水と少量の窒素酸化物が排出されますが、二酸化炭素は排出しないので、ガソリンエンジンに比べて環境負荷が少ないというメリットがあります。
水素をどうやって供給するかが課題
水素エンジンの普及において最大の課題となるのは、燃料の水素をどのようにして供給するかという点です。仮に天然ガスなどから工業的に水素を生産・供給しようとすると、結果的にガソリンを使う場合と同じかそれ以上に化石燃料を消費してしまうという結果になりかねません。しかし、例えば製鉄所や化学プラントでの工業生産の副産物として排出される水素を回収して再利用すれば、環境に負荷をかけずに水素エンジンを実用化することが可能になります。
乗用車すべてに水素エンジンを導入するのではなく、まずはバスなどの公共機関や商用のトラックなどに水素を供給する仕組みを作って運用できれば、それが水素エンジン搭載車を実用化する、最も理想的な展開かもしれません。
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先生情報 / 大学情報
東京都市大学 理工学部 機械工学科 教授 伊東 明美 先生
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