小腸の動きを解明する、機械工学へ高まる期待!
まだ明らかになっていない小腸運動
科学の進歩によって、人間の体内活動は次第に明らかになっています。しかし、小腸の運動についてはまだ解明されていません。胃や大腸と違い、口や肛門から内視鏡を入れるにしても、奥深い場所にあって計測が難しいのがその理由でしょう。人間の小腸の直径は20mm程度です。現在、直径6mmのカテーテルに圧力センサを内蔵させ、小腸の運動を解明する試みが行われています。しかし、腸管の太さに対してカテーテルが細く、小腸の大きな収縮のときしかセンサに触れないため、詳細な動きはわかりませんでした。
小腸内に留置したバルーンが運動を感知
そこで、先端部にシリコン製のバルーンを有するカテーテルを用いた計測法を考案しました。この方法では、腸壁とバルーンが常に接しているため、これまでより詳しく小腸の動きをとらえることができるようになりました。この方法を生み出したことにより、医療分野に多くのメリットがもたらされることが期待されています。特に、治療に使われているチューブが、運動までも計測できるようになった点です。以前であれば、計測用のカテーテルと投薬・内容物の吸引などの治療用カテーテルは別でしたが、同じカテーテルで可能になったため、患者さんに負担をかけずに済むようになりました。
日常生活に欠かすことのできない機械工学
腸管と接している状況をつくり、小腸運動をセンサで感知することによって、今まで知られていなかった小腸の働きを解明しようとしています。収縮活動の中からSOSが感知できれば、適切な治療が行われるようになることでしょう。小腸の動きの解明、すなわち医療分野への貢献ですが、カテーテルやバルーンの材料、センサを用いた計測原理などは機械工学そのものであり、さまざまなシーンで私たちの生活に欠かすことのできない学問となっているのです。
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