「暗がり」の中に人の存在を感じられる光のあり方をデザインする

「暗がり」の中に人の存在を感じられる光のあり方をデザインする

照明で遊び心のある演出を加える

照明は、建物や街を形づくっていく上で、なくてはならない存在です。例えば、ある建物を建てた時、その内装や外壁の印象を変えるために壁の色などを変更しようと思っても、いつでも気軽に、というわけにはいきません。しかし、照明であれば、光源の種類や色合い、配置などを工夫することで、夜になれば同じ建物をさまざまな印象に、変幻自在に変化させることができます。つまり、建物そのものに手を加えるよりも手軽に、そして時にダイナミックに、遊び心のある演出を実現できるのが、照明のデザインの魅力なのです。

暗いからこそ伝わる町の風情がある

日本ではこれまで、より明るく、きらびやかで、見ていて楽しくなるような照明が好まれる傾向にありました。しかし、例えば京都の祇園や先斗町(ぽんとちょう)などの歴史や趣のある路地では、夜になると、ほどよい暗がりの中で家々の窓から光がこぼれており、それが穏やかな風情を醸し出しています。夜にそぞろ歩けば、家々からこぼれる光で、そこにどんな人々が暮らしているのか、そこはかとなく感じられるような街の景観があります。「照明デザイン」とは何もかも明るくすればよいというものではないのです。そうした「暗がり」の中に人の存在を感じられるような光のあり方をデザインするのは、建物や街の照明を考える上ではとても大切なことなのです。

照明のデザインに現場での試行錯誤は欠かせない

照明の設計では、どんな場所でも同じやり方が通用するわけではありません。机上のシミュレーションだけではなく、実際に現場に出むいて光源を置いてみなければわからない要素が、とてもたくさんあるのです。一面的な見方に偏るのではなく、光と暗がり、それぞれの効果をきちんと把握しながら、現場とそこに住む人の考え方にフィットした照明を検討する必要があります。照明のデザインとは、現場で試行錯誤した経験を積み重ねてこそ、磨きがかかってくるものなのです。

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東京都市大学 建築都市デザイン学部 建築学科 教授 小林 茂雄 先生

東京都市大学 建築都市デザイン学部 建築学科 教授 小林 茂雄 先生

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建築学

メッセージ

光や色は、私たちの生活のいろいろな場面で活用されています。華やかな照明だと気分が楽しくなったり、青く落ちついた照明の場合では厳粛な雰囲気が醸し出されたりします。しかし光や色はあまりに身近にあるものなので、普段はその効果を意識することはありません。また、そういった効果について学ぶには、大学で講義を受けたり、図面やパソコンで演習したりするだけではじゅうぶんではありません。実際に現場で、照明デザインを体験することを通じて初めて、空間の中で光や色の効果を活用する能力が身につくのです。

先生への質問

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東京都市大学は2009年4月に武蔵工業大学からへ校名を変更。新たに文系2学部、理系2学部、文理複合系1学部を擁する総合大学として発足しました。前身の武蔵工業大学は80年の歴史を持ち多くの卒業生を輩出、日本の産業発展に貢献して来ました。97年には文系・理系複合の環境情報学部、09年には文系の都市生活学部と人間科学部を設立し、工学部から分かれた知識工学部を加えて学問の分野が大きく広がっています。80年の歴史を携え、キラリと光る特徴をもち存在感のある大学を目指す東京都市大学は、常に進化を続けています。