-250℃の極低温液体を扱う技術で新エネルギーを支える

-250℃の極低温液体を扱う技術で新エネルギーを支える

地球温暖化と化石燃料枯渇を解決

燃やしても二酸化炭素を出さず、天然ガスよりも燃えやすい燃料があります。それは水素です。水素は水の電気分解をはじめいろいろな方法で作り出すことができ、原料が枯渇する心配もないため、地球温暖化と化石燃料枯渇の問題を一挙に解決できる新しいエネルギーとして注目されています。実用化するには、効率的な運搬や貯蔵のために液化して扱う必要がありますが、液体水素の温度は20ケルビン(約-253℃)という極低温です。その極低温の液体を運搬したり積み下ろしたりする技術の開発が必須です。

外側にセンサーを付ける新しい流量計

極低温の液体のための流量計開発もそのひとつです。水素は分子の大きさが最も小さいので漏れやすく、漏れると爆発してしまう危険性があります。既存の流量計は配管の内部にセンサーが付いているため、取り付け部分から水素が漏出することもあり得ます。そこで研究されているのが、外側にセンサーを付ける新しい流量計です。強化プラスチックの配管の中にらせん状の流路を作り、流れる液体の遠心力でわずかに生じる配管のひずみを外側に貼り付けた「ひずみゲージ」で検知して流量を計算します。ひずみゲージは薄く小さな樹脂製で、中にある金属素子がひずみとともに伸び縮みすることで生じる電気抵抗の変化を検知します。

幅広い活躍が期待されるひずみゲージ

配管の強化プラスチックもひずみゲージも、低温での性質は液体窒素の温度である-196℃程度までしかわかっていません。これらの材料の極低温での性質を調べるところから実験が進められており、実験データを集めて最終的に流量計の開発が目標とされています。
また、実験によってひずみゲージは温度変化にも敏感であることがわかりました。液体水素の配管に貼り付ければ、その温度変化から漏出を検知する安全装置として活用できると考えられます。構造がシンプルで壊れにくく安価であるため、ほかにも液体水素を扱う上での幅広い用途が期待されます。

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先生情報 / 大学情報

神戸大学 海事科学部 マリンエンジニアリング学科 助手 佐藤 更 先生

神戸大学 海事科学部 マリンエンジニアリング学科 助手 佐藤 更 先生

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船舶海洋工学

メッセージ

進路決定のように、決められた期限で自分の道を選ばなければない状況があると思います。そこで道に迷ったら、自分の可能性を狭めないように、選択肢の広い方を選ぶことをお勧めします。私自身、理系を選んだのも選択肢が広いからで、物理を選択し、船の仕事も陸の仕事もできるということから機関士になり、いまに至っています。悩んだときは視野を広く持ってほしいです。高校時代はまだ視野も狭くなりがちなので、世界を広くみるよう意識してみましょう。それがいつのまにか自分の強みにつながっていくはずです。

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